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【私の一冊】琉球列島における死霊祭祀の構造

No.4863 (2017年07月08日発行) P.73

村中璃子 (京都大学医学研究科非常勤講師/医師・ジャーナリスト)

登録日: 2017-07-08

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  • 柳田國男の存命する唯一の弟子である、民俗学者の酒井卯作が長年の調査研究をもとに琉球列島の死霊祭祀を詳細に分析した書。第28回柳田國男賞受賞(第一書房、1987年刊)

    琉球列島の死霊祭祀、昔と今

    奄美から台湾にかけて天の川のように島の連なる琉球列島。そこでは古くから、独特の死生観に基づく弔いが営まれてきた。画家の岡本太郎が『沖縄文化論 忘れられた日本』で紹介した風葬や洗骨の風習を知っている人はいるだろう。しかし、火葬場のない島では今でも、島ごとに個性ある弔いが行われていることを知る人は少ない。

    沖縄といえば巨大な亀甲墓が有名だが、あれも比較的最近つくられるようになった金持ちの墓。琉球列島では元来、死人が出れば野ざらしに、墓はつくっても墓参りをしないなど、生者は死者に冷たかった。

    現代社会における死は、病院と医療に囲われた安全な存在である。しかし、死は恐怖であり破滅で、不吉であり不潔だった。本書で描かれるのは、消毒され、漂白され、悲しみの対象として過度に美化された、現代社会の死に対する強烈なアンチテーゼだ。

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