産業医や医療関係職種による「治療と就労の両立支援」をテーマにしたシンポジウム(主催:日本病院会)が12日、都内で開かれた。有賀徹氏(労働者健康安全機構)が基調講演を行い、両立支援の充実に向けて「産業医機能を地域の体制として展開する必要がある」と持論を展開した。
講演で有賀氏は、産業医選任義務のない従業員50人未満の事業場で働く労働者が全体の約6割を占めることから「全労働者の4割程度が『病気をしても働く』ことと無縁の場所にいる可能性がある」と指摘。非正規雇用や高齢者を含む労働者全体に両立支援を行き渡らせる方策として、地域の救急・消防関係者が搬送体制などを協議・検証する「メディカルコントロール(MC)協議会」を参考に、地域医師会、労働行政、産業医、かかりつけ医で構成する“産業保健MC協議会”の構築を提唱した。
産業医の立場からは、中嶋義文氏(三井記念病院)が講演。両立支援における産業医の役割について「病気をしても働く人を何重にも抱える役割を他の関係者と共に担うこと」と述べた。また「産業医は労働関係法令、生活支援、医療費助成、障碍者手帳など、最新の行政の制度を知っておかなければならない」とし、厚生労働省が公表している疾患別の両立支援ガイドラインにも「必ず目を通しておくべきだ」と強調した。