編: | 日本産業衛生学会関東産業医部会 |
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判型: | B5判 |
頁数: | 724頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2020年12月24日 |
ISBN: | 978-4-7849-3043-2 |
版数: | 第3版 |
付録: | - |
◆嘱託産業医にも専属産業医にも役立つ、産業医活動のすべてを網羅した1冊です。
◆4年ぶりの改訂第3版では、労働安全衛生法改正などの産業保健分野での変革をふまえ、現場で役立つ情報をアップデートしまとめました。
◆「働き方改革」をはじめ、新型コロナウイルス感染流行のなか注目されているメンタルヘルス、在宅ワーク、職場での感染症対策などもしっかり解説。産業医が求められている業務範囲や役割の理解に役立ちます。
第1章 産業医としてまず行うこと,知っておきたいこと
1 産業医の役割:職務内容と責任 ─ 産業医の心構え
2 会社との契約と報酬の決め方 ─ 嘱託産業医として初めに行うこと
3 産業衛生の基本 ─ 産業医と人事・労務との関係
4 産業医の法的職務内容 ─ 産業医は,産業医学に基づいて誠実に職務を行い,事業者に意見・勧告し,衛生管理者・労働者に助言・指導する
5 産業衛生と関係法規 ─ 法律的な観点から
6 裁判例から学ぶリスクマネジメント ─ 企業の健康管理に伴う法的リスクと産業医活動
7 労働基準監督署との関わり ─ 労働安全衛生法に基づく届出など
第2章 産業衛生活動を継続していくために基本となる管理業務
[1] 職場巡視と衛生委員会
1 会社の把握:衛生委員会 ─ 衛生に関する最高審議の場
2 製造現場の職場巡視 ─ 工場の「回診」
3 事務系産業の職場巡視と衛生委員会 ─ 「見えない」ものを「診る」ためには
[2] 健康管理
1 一般健康診断と事後措置
2 シフトワーク(交代制勤務)への対応 ─ 睡眠を制するものはシフトワークを制する
3 派遣社員への対応 ─ 派遣元と派遣先双方のしっかりとした認識と対応が重要
4 小規模散在事業場における健康支援 ─ 確かなネットワークですべての労働者に産業保健サービスを
5 過重労働 ─ 長時間労働者への医師による面接指導
6 心理対策 ─ 労災・民事訴訟の視点から
7 海外派遣社員の健康管理 ─ 海外勤務者対策
8 高年齢労働者の健康管理
9 障害者雇用制度と合理的配慮
[3] 作業環境管理
1 作業環境管理とは ─ 作業環境管理と健康管理の相似性
2 作業環境の把握と産業医の関わり方
3 作業環境の改善 ─ 労働安全衛生マネジメントシステムに基づく
4 金属および金属化合物の取り扱い ─ 有害金属と生体影響,健康管理
5 有害物質の取り扱い ─ 法律はどのように指示しているのか
6 職場での化学物質の表示・文書交付制度
7 半導体などの職場における課題と対応 ─ 化学物質管理とメンタルヘルスの問題を中心に
8 受動喫煙防止のための対策
[4] 作業管理
1 職場における疾病の一次予防の展開
2 職場における人間工学的対策について
3 腰痛対策 ─ リスクアセスメントと作業改善
4 情報機器作業
第3章 産業医学における疫学の実践
1 疫学研究と産業保健活動の関わり ─ 高木兼寛の脚気撲滅の取り組みを例として
2 疫学研究の進め方 ─ 睡眠障害と高血圧に関するコホート研究を例として
3 疫学研究の注意点
4 データヘルス計画と産業保健
5 労働者の健康情報管理
第4章 産業メンタルヘルス
1 メンタルヘルスの基本的な考え方 ─ メンタルヘルス対策の枠組み
2 うつと自殺防止
3 過重労働 ─ メンタル不全の予防のために
4 職場におけるパーソナリティ障害 ─ 職場の困った人々の症例を中心に
5 PTSDと労災 ─ 労災に起因したPTSD
6 職場不適応 ─ 適応障害とうつ病の鑑別
7 メンタルトラブルがうかがわれる異常な行動
8 発達障害 ─ 自閉症スペクトラムと注意欠如・多動性障害
9 産業衛生における睡眠医療 ─ 日中の問題眠気がもたらす社会的影響
10 職場復帰判定 ─ 復帰判定や主治医連携のポイント
11 職場復帰後のフォローアップ ─ 状態把握,アドバイスなどのポイント
12 人事との対応について ─ オンリーワンの産業医をめざして
13 産業医の精神科的アプローチ ─ PIPCの紹介
14 リワークプログラム
15 パワハラ・セクハラ ─ 産業医が知っておくべきこと
16 ストレスチェック
第5章 職場における感染症対策
1 結核対策 ─ 患者発生時の対応をふまえて
2 海外渡航時の感染症対策 ─ 旅行者下痢症を中心に
3 事業所における感染症対策 ─ 身近な感染症から新興感染症に至るまで
第6章 適性検査と産業衛生
1 航空身体検査
2 鉄道運転士の検査:公共輸送の安全と身体適性管理 ─ 鉄道運転士の身体適性をどう判断するか
3 交通における健康管理の重要性 ─ 自動車運転業務について
4 医薬品の取り扱い
第7章 産業衛生に関わるシステムづくり
1 労働安全衛生マネジメントシステムとリスクアセスメント
2 ISO 45001
第8章 外部資源利用
1 産業保健活動総合支援事業 ─ 地域産業保健センターと産業保健総合支援センターの役目
2 産業保健と外部相談機関(EAP) ─ 選定や連携のポイント
3 労災病院など資源の活用
4 医師会活動の現場から ─ 地区医師会と産業医活動の関連
5 外部相談機関(EAP)の今後の役割 ─ ストレスチェック制度を踏まえて
第9章 産業医と他職種との関わり
1 社会保険労務士の役割と産業医との関わり
2 産業歯科の役割と産業医との関わり ─ 職業性歯科疾患対策と全身の健康づくりの一環としての歯科保健
3 産業看護職の役割と産業医との関わり ─ 看護職との協働
4 産業心理職(臨床心理士・公認心理師)の役割と産業医との関わり ─ 産業精神保健活動とパートナーシップ
5 産業カウンセラー®の現状と連携
6 精神保健福祉士の役割 ─ 今後への期待
7 弁護士の立場から
8 衛生管理者との連携
第10章 働き方改革
1 産業医として知っておきたい「働き方改革」の基礎知識
2 労働関連法改正に伴う産業医の注意点
3 「働き方改革」と産業衛生 ─ 運用面の課題
4 治療と仕事の両立支援 ─ 労働者本人を中心とした事業場と医療機関の連携推進をめざして
5 がん治療と就労の両立支援
6 科学的根拠に基づく産業保健分野における復職ガイダンス
7 高年齢労働者の就労支援
8 性同一性障害の理解と職場対応
9 過労死・過労自殺の労働災害の実態と予防対策
第11章 産業衛生活動に役立つ知識
1 産業衛生と救急 ─ 職場における救急時の初期対応と状況別の応急手当
2 学校における健康管理と産業医 ─ 教職員への対応
3 栄養学と産業医活動 ─ 科学的根拠に基づく食事指導の勧め
4 職域健康づくりの経済的評価 ─ 健康づくりのメリットを示す
5 公務職場の労働衛生管理の特徴
6 ワーク・エンゲイジメント
7 労働生産性と産業保健
8 外国人労働者に対する産業保健 ─ 課題と対応
9 IoTと産業衛生
付録
コロナウイルス関連の情報(2020年11月末現在)
「働き方改革」として,労働基準法,労働安全衛生法などが改正され,本年4月から施行された。本書の改訂はこの「働き方改革」をふまえ企画・編集をさせていただいた。労働者の職場環境の改善と同時に,企業における生産性の向上などがより真剣に議論される時代となった。他方,新型コロナウイルス感染症が年初から流行し,在宅勤務などのテレワークを余儀なくされる大きな環境の変化の中にある。
産業衛生を主導・牽引する産業医は,労働者の安全・健康を「衛る」こと,業務内容を含めた職場環境を把握すること,そして企業の特徴をふまえた労働安全体制整備へ指導・助言,健康教育を行うことなど,そのニーズが明らかに高くなっている。新型コロナウイルス感染症対策から「withコロナ」への対応まで, 産業医の真価が問われるようになってきている。コンプライアンス遵守だけの考え方から,本当の意味で労働者,そして企業を「衛る」役割がより求められる時代になるだろう。
産業医のほとんどは嘱託産業医であり,その「嘱託産業医が実践ですぐに利用できる参考書」をめざして初版を企画・編集した。改訂第3版も,様々に変容する職場における実務遂行の一助となることを期待している。
改訂にあたり,ご多忙の中,ご執筆をご快諾いただいた先生方に深謝するとともに,日本産業衛生学会関東産業医部会幹事の先生方の支援が大変大きかったことを申し添える。
また,発行にあたり多大なご支援をいただいた日本医事新報社の原田,村上両女史, 編集協力をいただいたHSプランニング亀ヶ谷律子保健師, 株式会社i・OH研究所小畑絵美子保健師に御礼申し上げる。
最後に,初版および改訂第2版を活用していただいた多くの先生方のご評価・ご支援があったことで,今回も発刊することができた。改めて,御礼申し上げる。本書を機会に,より深い議論が進み,全国の産業医がさらに活躍することを期待する。
2020年11 月
編者を代表して
日本産業衛生学会関東産業医部会長 福本正勝