著: | 山本 晴義(横浜労災病院 勤労者メンタルヘルスセンター長) |
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判型: | A5判 |
頁数: | 186頁 |
装丁: | 単色 |
発行日: | 2016年06月30日 |
ISBN: | 978-4-7849-3036-4 |
版数: | 第1版 |
付録: | - |
産業医をはじめ、ストレスチェックに関わるプロフェッショナルの皆さん!
ストレスチェック制度の導入は「ピンチ」ではなく「大チャンス」
「~しなければならない」と難しく考えるのではなく
「~すればいいんだ」と前向きに考えることで
「異議ある」制度も「意義ある」制度に変わります
◆ 〈講演回数年間200回超/メール相談実績8万件超〉メンタルヘルスの達人 Dr.山本晴義が、全国の悩めるストレスチェック実施者のストレスを解消!
◆ 「ストレスチェックの上手な進め方」はもちろん、産業保健のプロとしてワンランク上の指導を実施するための「ツール」や「コツ」も紹介
◆ ストレスチェック制度を巡る「よくある質問」にもDr.山本流の解釈を加えて「現場目線」でアドバイス
[推薦メッセージ]
「大変興味深く読ませていただいた。山本先生は行動力があり素晴らしい。長年にわたり実務に関わってこられた方の本であり、大変わかりやすく書いてある」――久保千春 九州大学総長(心療内科医)
第1章 ストレスチェック制度は大チャンス
自分も、家族も、会社も、日本も元気にしよう!/なぜストレスチェック制度ができたのか/労働者のストレスを巡る行政の動き/会社に知られたくない心の悩み/なぜ企業がメンタルヘルス対策に取り組まなければならないのか
第2章 ストレスチェックをどう活用するか
ストレスチェックの位置づけと活用法/二〇〇〇年の旧メンタルヘルス指針/二〇〇六年の新メンタルヘルス指針/ストレスは「刺激に対する“歪み”」/良いストレスと悪いストレス/ストレス強度と生産性の関係/睡眠とメンタルヘルス/プライベートな要因の重要性/「ストレス一日決算主義」のススメ
第3章 メール相談に見るストレスの実像
三十代女性会社員からのメール相談/産業医としてできること、産業医だからできること/銀行員の妻からのメール相談/労働者と産業医の接点がない/求められる「産業医ならでは」の対応/大手電器メーカー会社員の妻からのメール相談/職場の陰に隠れて、家庭にストレス源がある場合も/ワーク・ライフ・バランスを重視する
第4章 ストレスチェックの上手な進め方
NIOSHの職業性ストレスモデル/ストレスチェック制度の目的/ストレスチェック制度の質問票/ストレスチェック制度の実施手順(①社内ルールの策定と衛生委員会の設置 ②ストレスチェックの役割分担 ③ストレスチェックの実施 ④結果の評価 ⑤結果の通知 ⑥面接指導の実施 ⑦面接での質問内容 ⑧ストレス症状の確認 ⑨サポーターの確認 ⑩医師からの意見聴取、就業上の措置の実施 ⑪集団分析)
[コラム]三つの「きく」
第5章 ストレスチェックをより意味あるものにするツールと指導のコツ
面接前に「メンタルろうさい」/「こころの耳」サイトを活用する/「こころの耳」を開くことが大切/Dr.山本流 面接指導のコツ/ケース別・面接指導のコツ/「キュア」と「ケア」を混同しない/「職場環境改善のためのヒント集」を活用する
第6章 「よくある質問」とDr.山本流アドバイス
制度全般について/ストレスチェックの実施方法/高ストレス者の選定/ストレスチェックの実施者/面接指導の申し出の勧奨/面接指導対象者の要件/面接指導の実施/医師の意見聴取/健康情報の取り扱い/外部機関によるストレスチェックの実施/安全配慮義務
[コラム]産業医とストレスチェック制度の関係
[コラム]衛生委員会の役割
[コラム]企業における産業医の三大職務
[コラム]Dr.山本流「復職支援の合同面談」
[コラム]さわやかなコミュニケーション「アサーション」
お役立ちリンク集/参考文献
巻末付録 メンタルろうさい 結果報告書のイメージ
医師・保健師等による心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)の実施を従業員五十人以上の企業に義務づける「ストレスチェック制度」が二〇一五年十二月、スタートしました。それにあわせて、この制度に関するガイドブックが数多く出版されました。どれもが非常に役立つものばかりで、勉強になります。
本書は、それらのガイドブックとは少し趣を異にしています。制度を一から勉強するために読む、というよりは、これを読むことでストレスチェック制度への理解をより深めてもらいたい、「面倒だ」と思っている人にはストレスチェック制度に少しでも「興味が持てた」と思ってもらいたい、という願いを込めて書きました。ガイドブックというよりは「読み物」として目を通していただきたいと思っています。
制度そのものを理解するには、厚生労働省が出している資料を読んでもらう必要があります。その際の「参考書」として本書を役立ててもらえると嬉しいです。厚労省が出している資料は、同省のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳(kokoro.mhlw.go.jp)から簡単に見ることができます。「こころの耳」はストレスチェック制度を実施していく上で非常に役立つ内容が満載ですので、積極的に利用してほしいと思います(詳細については、この本でも折に触れて書いていくつもりです)。
私は全国で年間二百回を超える講演会を行っていますが、講演会の冒頭でよく言うセリフがあります。
「私の講演はメモやノートを取らないでください。メモを取らずに忘れてしまったとしても心配はありません。それはあなたにとって必要のない情報だっただけのこと。逆に、メモを取らずに話だけを聞いて、明日になっても記憶に残ることが一つでも二つでもあったとすれば、それがあなたにとって必要な情報だったということなのです」
この本も同じです。読み物として気軽に読み進めていただきたい。読み終わったときに記憶に残る情報があったとすれば、それがあなたにとって必要な情報なのです。その情報を、明日からのストレスチェック制度の実践に生かしていただければ幸いです。
もちろん、この本だけで完璧な知識が身につくわけではありません。先にも触れた厚労省のポータルサイト「こころの耳」とあわせて読むことで理解は深まるはずです。
この本は、主としてストレスチェック制度の実施者、産業医、ストレスチェックに関わる保健師、看護師、精神保健福祉士、衛生委員会のスタッフなどに読んでいただくことを想定していますが、それ以外のすべての労働者や経営者にも読んでほしいし、役立つ内容だと自負しています。この制度をつくった厚労省の方針、考えに沿った内容となっていますが、その大きな方針から逸脱しない範囲で、私なりの考えを加味したアドバイスも盛り込んでいます。原理原則を曲げることはしませんが、なるべくお役所言葉を使わず、現場目線で、誰が読んでも「そうだよな」と納得してもらえるような本にすることを心掛けました。
前半では、ストレスチェック制度の成り立ちや概要、そしてこの制度に関わる人に知っておいてほしい基礎知識などをまとめました。
後半では、厚労省のホームページに掲載されているストレスチェック制度に関するQ&Aの中から、特に現場の皆さんが悩みそうな、あるいは解釈に迷うような質問をピックアップし、厚労省の回答とあわせて、私なりの考えを加えたアドバイスを掲載しています。といっても、読んでいただければわかる通り、厚労省の見解を否定するものではなく、「見方を変える」「考え方を変える」ことで、制度のわかりにくいところをわかりやすく考えてもらおうという試みです。
加えて、私たちが十年の歳月をかけて開発した「メンタルろうさい」という、インターネットを用いた勤労者のためのメンタルサポートシステムについても、要所要所で繰り返し紹介しているので、これもぜひ活用してほしいと思っています。
ストレスチェック制度は、悪者を取り締まる制度ではありません。頑張っている人を見つけ出し、その疲労を和らげてあげるための制度です。「~しなければならない」と難しく考えるのではなく、「~すればいいんだ」と前向きに考えることで、実施者であるあなた自身のストレスも軽減するはずです。
ストレスチェック制度に関する本を読むのが初めてという人には、この制度に興味を持ってもらうこと、すでに関連書籍を読破している人には、少し肩の力を抜いてもらうことを目標に書きましたが、それでいて読み終わる頃には、ある程度の知識と自信がつくように構成しました。
この本が、事業場の職場環境改善とストレス軽減を目指す産業医はもちろん、ストレスチェック制度に関わるすべての皆さんのお役に立つことを願っています。