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「国民の支払い意思額」調査、了承得られず再提案へ―費用対効果評価専門部会【どうなる?診療報酬改定】

登録日: 2017-07-18

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中央社会保険医療協議会(田辺国昭会長)の費用対効果評価専門部会では、次期2018年度診療報酬改定で本格導入される費用対効果評価の制度設計を巡る議論が本格化しています。12日の同部会では厚生労働省が、「総合的評価」に用いる「国民の支払い意思額」の調査方法を提案しました。

「公的医療保険で答えてもらう必要性が理解できない」と述べる松本氏

費用対効果評価は、①対象の選定、②企業によるデータ提出、③再分析、④総合的評価(アプレイザル)、⑤評価結果の活用―という流れで行われます。そのうち④の総合的評価は、対象品目の費用対効果について優れているか否かを判断するものです。1QALY(質調整生存年)当たりの増分費用効果比(ICER)を評価に用いることになっていますが、判断に当たっては、国民が“いくらなら支払っても良いか”という「支払い意思額」が基準になります。

しかし、支払い意思額は国民1人1人で異なるため、アンケートで1QALYを獲得するための支払い許容額を調査し、何%が許容したかによって、「とても良い」「良い」「受け入れ可能」「悪い」「とても悪い」の5段階で評価する形になります。

■「1年間寿命を延ばす治療」への支払い意思を調査

そこで厚労省は12日の同部会で、アンケート調査票案を提示。全国の100地点以上の市町村から年齢や性別に偏りが生じないように無作為抽出した3000人以上に対し、「ある人が病気にかかっており、死が迫っています。しかし、この病気に対する新しい治療法が開発されました。そのためこの治療を受ければ、完全に健康な状態で1年間だけ寿命を延ばすことができます」という状況設定で、「この治療法に対し公的医療保険として支払う費用は、治療全体で一人○円です。この場合、この費用を公的医療保険で支払うべきだと思いますか?」と質問します。金額については、あらかじめ設定した組合せに基づき「はい」と答えた人にはさらに高い金額を、「いいえ」と答えた人には低い金額を合計2回まで再提示して、支払い意思額を調査していきます。

しかし支払い意思額は、収入や健康上の問題に応じて変化する可能性があるため、最終学歴などを含む個人的属性についても調査を行い、必要な場合には一定の補正を行うことになります。

■質問内容の妥当性への懸念相次ぐ

厚労省が示した調査票案を巡っては、両側委員から多くの問題点が指摘されました。支払側の吉森俊和委員(協会けんぽ)は「死が迫っているとなれば『金額は問わない』と答える国民が多くなるのではないか」と質問内容の妥当性を疑問視しました。また幸野庄司委員(健康保険組合連合会)は「ほとんどの国民が医療保険制度に対する理解度が低い中でこうした質問をしても、適切な回答が得られるとは思えない」との懸念を示し、保険料負担への影響など医療保険制度の十分な説明をした上で質問すべきとの考えを示しています。診療側の松本純一委員(日本医師会・写真)も同様に「自己負担で考えてしまう可能性がある」として、質問内容の再検討を求めました。

一方、こうした調査では詳細な事前説明を行うことで、「逆のバイアスがかかってしまう」と懸念する声もあります。厚労省はこれらの指摘を踏まえ、質問内容を含めた調査方法について、同部会に改めて提示する意向を示しています。費用対効果評価の制度化を巡っては、次回会合で関係団体からのヒアリングを行い、今夏中に中間取りまとめが行われる予定です。

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