乳癌の70%近くはホルモン受容体(HR)陽性(luminal type)であり,浸潤性乳癌の補助療法として5年間の補助内分泌療法が推奨されてきた。しかし,HR陽性/HER2陰性乳癌では晩期再発と呼ばれる術後5年以上経過しての再発が認められ,5年以上のホルモン療法の意義を証明するために臨床試験が行われてきた。リンパ節転移陽性などの再発リスクが比較的高い患者群では,選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)であるタモキシフェンの5年投与よりも10年投与が再発率と死亡率を減少させたことが証明され,タモキシフェンの10年投与が患者により考慮されるべきとされた1)。また,閉経後早期乳癌に対するアジュバント療法無作為化試験(MA.17R試験)は,SERMの5年投与にアロマターゼ阻害薬の5年投与を追加し,合計10年まで補助内分泌療法を延長することで,乳癌再発について比較した。
6.3年の観察期間では,イベント数はレトロゾール群67例,プラセボ群98例であった。遠隔再発はそれぞれ42例,53例,新規対側乳癌は,それぞれ13例,31例であった。主評価項目である無病生存期間(DFS)は,統計学的に有意にレトロゾール群がプラセボ群より優れていた。なお,全生存期間に有意差は認めていない2)。
アロマターゼ阻害薬もSERMと同様,長期間投与の時代に入った3)。
【文献】
1) Davies C, et al:Lancet. 2013;381(9869):805-16.
2) Goss PE, et al:N Engl J Med. 2016;375(3):209-19.
3) Mathew A, et al:Breast. 2015;24(Suppl 2):S120-5.
【解説】
佐伯俊昭 埼玉医科大学国際医療センター 包括的がんセンター乳腺腫瘍科教授