里文出版、2008年刊。筆者がメーリングリストに連載した生と死に関する随想(原題「長寿を喜ぶ」)をまとめた。様々な経歴のメンバーから寄せられた賛同の声や反論も収載されている。
戦後日本人の寿命は急速に伸びて、今や世界一の長寿国になった。しかしこのめでたさの半面、介護を必要とする老人が激増し、介護難民が多発している。また、戦後は旧来の道徳観が消失し、生命尊重の思いすら薄れてきた。これが生命軽視の傾向を生み、いじめ、虐待、無差別殺人などの増加を招いていると言われている。筆者である私はこれらの問題を憂えて、仲間同士のメーリングリスト(以下、ML)にこの思いを連載した。
このMLは、筆者ら旧制高等学校(旧制二高)卒業生仲間のMLで、仲間の平均年齢はおよそ80歳である。こういう年寄りばかりのMLであるが、みな元気で、年功を積んだ方ばかりだ。なかなか味わい深いコメントを寄せてくださる。コメントの多くは同感と激励であった。
連載が一段落した時、彼らからこれをまとめて出版すべしとの声が挙がった。
こうして筆者の原文と仲間のコメントを集めたのが本書である。題名は『やすらぎの長寿考』であるが、これは出版を依頼した里文出版のお勧めによる。同社の社主もまた、旧制二高の同窓生である。
筆者は東北大学を定年退官後、東北労災病院の院長となり、72歳まで勤めたが、今は名誉職のみで定職はない。そこでできた余裕の時間をボランティア活動に当て、骨髄バンク、ホスピス活動、介護ボランティア育成活動などをしている。その時、本書を謹呈したり、購入してもらったりしているが、読んだ方から好評をいただき、活動推進に役立てている。
高齢問題、介護問題、命の尊厳の問題などに関して、本書は一応の指針を示している。かかる問題に興味のある方には是非読んでいただきたいと思う。