進行再発固形腫瘍の宿命とも言えるrebiopsyの課題も,liquid biopsyにより解決し,precision medicineの実用化も近い。ESR1遺伝子変異は,転移乳癌の内分泌療法に対する抵抗性に関与することが示唆され,アロマターゼ阻害薬(AI)耐性ER陽性乳癌の20%に関与するとされている。また,血漿中に検出されたctDNAは,腫瘍の遺伝プロファイルの潜在的サロゲートである。予後予測因子としての血液中のctDNAを用いてESR1遺伝子変異と予後を検討することを研究の目的とした試験が報告されている。前向きの臨床試験であるPALOMA-3 trialに参加した患者を対象とした。ESR1遺伝子変異は27%に検出された。前治療のAIに対する抵抗性とESR1遺伝子変異には強い相関が認められた。palbociclibは,ESR1遺伝子変異に関係なく高い奏効を示した1)。
他の報告として柳川らは,digital PCR法ではなく,NGS法を用いてESR1遺伝子変異を同定した。ホルモン受容体陽性の初発乳癌16例と再発乳癌47例にて38例の血清を採取し,既知の3つの変異(Y537C,Y537N,D538G)と新規の変異(E279V,G557R)を検索した。ESR1遺伝子変異のあった全9例ではすべてAIの治療を受けており,この変異はAI治療例で多かった。liquid biopsyの方法論の発展とともに,治療耐性乳癌のメカニズムと新規薬剤の開発が期待されている2)3)。
【文献】
1) Costa R, et al:Breast. 2017;35:1-7.
2) Yanagawa T, et al:Breast Cancer Res Treat. 2017; 163(2):231-40.
3) Beddowes E, et al:Breast. 2017 Jul 8. [Epub ahead of print]
【解説】
佐伯俊昭 埼玉医科大学国際医療センター 包括的がんセンター乳腺腫瘍科教授