YouTubeで40万人が観た人気動画が、昨年7月に劇場版として公開。関口祐加監督が自らカメラを回し、2年半にわたり認知症の母との暮らしを記録した。遠藤氏も「医師」の1人として登場する。全国で開かれている自主上映・講演会のスケジュールは公式サイト(http://maiaru.com/)に掲載。
この映画は、女性監督・関口祐加氏の母親である「認知症の人」のドキュメンタリーである。
我々医師は、診察室にいる患者しか診ないのが通常であるが、この映画では、認知症の人の生活がありのままに表現されている。主人公であるひろこさんの1日を通して、認知症の中核症状やBPSD(行動心理症状)が映し出されており、非常に貴重で興味深い。
関口氏は、この映画の監督であると同時に、家族であり、傍観者であり、当事者である。認知症と診断されると、家族はそれを受容できず、パニックになることが多いが、映画では、そうした生活の場面で認知症の人や家族が出くわすさまざまな出来事が、おもしろおかしく取り上げられている。
ひろこさんは認知症を発病した後、外部との交流を遮断し、自室に閉じこもり、寝たきりになりかけるが、そんな時、訪問看護師、介護支援専門員、男性訪問介護員らが彼女の元を訪れる。
ひろこさんは最終的に心の壁を乗り越え、デイサービスに通うことができるようになり、3年ぶりの入浴も可能となった。最大の貢献は、イケメン訪問介護員の活躍であった。
大事なことは、認知症になってもその人らしく、ありのままに生きるということ。認知症について教科書を何冊読んでも分からないことが、この映画を一度観るだけで分かる。
なお、この映画には3人の医師が登場する。その役割分担も興味深いところである。医師をはじめ、介護職の方、家族の方にも是非観ていただきたい映画である。