うつ病の治療は,昔から休息,薬物療法,そして精神療法という3本柱で行われてきた。しかし,一度は回復し復職したものの短期間で再休職となる患者が目立つようになった。保護的環境からいきなり就労というプロセスでは,負荷が大きいことは十分予想できることから,療養と就労の間を埋めるリハビリテーションとして,近年,主にうつ病患者の復職支援を目的とした「リワークプログラム」が注目されるようになった。
一般的に,作業療法士,臨床心理士,精神保健福祉士など多職種が関与し,疾患教育ならびに再発予防教育を通じて,生活管理能力やストレス対処能力を高める「学習プログラム」,現実に就労しているときと同様の作業を行い,仕事で必要な集中力や持続力の回復をめざす「個別プログラム」,コミュニケーションの取り方や責任を持った役割遂行の仕方を身につける「集団課題プログラム」などが提供される。なぜ自分がうつ病になったのか,を振り返るために,「自己分析レポート」を課す施設も多い。
患者は自分のコミュニケーションの特性や,感情コントロールの問題,作業能力の課題などに直面し,それらをいかに修正し職場に適応しやすい状態に持っていくか,を考えることが求められる。治療者側では,多職種による評価により患者ごとの課題がより明確となり,それに即した各種心理社会的治療が,効率よく,しかも集団で行える利点がある。
本プログラムは,今後広汎に普及し,いっそう発展することが期待される。
【解説】
鷲塚伸介 信州大学精神医学教授