C型肝炎の新規抗ウイルス療法の適応は,ゲノタイプと過去の直接作動型抗ウイルス薬(DAAs)治療歴から判断する
新規抗ウイルス療法では,1回の治療で確実に治すために細心の注意を払うことが要求される
ウイルスが排除されても肝発がんの危険性は消失せず,排除後も定期的な経過観察が必要である
C型肝炎は自覚症状に乏しく肝病変の進行も緩徐であるが,長年の経過で肝硬変に進展し肝細胞癌の合併が高率となる。治療法は大きくわけて,肝庇護療法による肝線維化の抑制と抗ウイルス療法によるC型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV)の排除があるが,後者がより望ましいことは言うまでもない。インターフェロン(interferon:IFN)単独治療は1992年から開始されたが,ウイルス排除(sustained virological response:SVR)率は十分とは言えなかった。その後,ペグインターフェロン(Peg-IFN)の開発やリバビリン(RBV)の併用などによりSVR率は大きく改善した。さらに近年,直接作動型抗ウイルス薬(direct acting antiviral agents:DAAs)が開発され,SVR率が飛躍的に向上した。DAAsは単剤で用いると耐性変異が出現し,十分な効果が得られない。このため,ほかの抗ウイルス薬と併用される。当初開発されたNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬はPeg-IFNと併用されていたが,その後,系統の異なるNS5A阻害薬やNS5Bポリメラーゼ阻害薬が開発され,DAAsの組み合わせによるIFNフリーの治療が進歩した。
図1に現状での標準治療を示した1)。治療法を決める主な要因はゲノタイプと過去の治療歴であり,特にDAAsによる治療歴は重要であるが,耐性変異の問題もあり,安易な再治療は多剤耐性の原因となることが指摘されている。DAAsを含むレジメンでの治療歴がない症例ではIFNフリーの治療が標準となっている。この理由として,IFNフリー治療のSVR率が100%近いことや,副作用が少なく治療期間が短いため忍容性が高いことが挙げられる。ゲノタイプ1ではレジパスビル(LDV)とソホスブビル(SOF)の複合薬であるハーボニーRの12週間投与が第一選択であり,日本の治験成績では171例の対象でSVR率は100%であった2)。ゲノタイプ2ではソホスブビルとリバビリン併用の12週間投与が第一選択であり,同じく日本の治験成績では153例の対象でSVR率は97%であった3)。ソホスブビルは核酸型のNS5Bポリメラーゼ阻害薬であり,現在はC型肝炎治療の要となっている。DAAsとして例外的に多くのゲノタイプに効果があることと,耐性変異の出現が少ないことがソホスブビルの特徴として挙げられる。
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