これまでCT検査は形態学的画像診断が主であり,多列化,高空間分解能および高時間分解能の進化により鮮明な画像の取得ができるようになり,逐次近似再構成法の利用により少ない被ばく線量で検査が可能となった。また,perfusion画像や4D画像など,時間的な要因を加味した機能学的画像の取得が可能になった。さらに,近年開発されたdual energy技術により,CT検査は機能学的画像診断において新たなステージに突入した。
臨床応用されているdual energy技術は,rotate-rotate方式,2管球方式,fast kV switching方式,2層検出器方式などである1)。異なる2種類のX線エネルギーにて透過データを取得し,40~140 keVの単色X線等価画像(keV画像)の構築が可能になった。各単色X線等価画像より得られるCT値変化曲線は物質により固有であり,物質の弁別が可能になる。つまり従来,類似したCT値のため区別できなかった物質同士や,混じり合っているため平均CT値として表示されていた物質同士でも,それらを分離して成分を単独で画像化できる可能性がある。現在,ヨード成分抽出によるヨード密度画像や仮想非造影画像,脂肪成分抽出による脂肪密度画像が臨床応用されている。さらに,ビームアーチファクトの抑制によるCT値の正確性の向上,低keV画像によるヨード造影剤のコントラストの向上による造影剤使用量の低減化が可能となり,今後ますますdual energy CTの臨床的価値が高まると思われる。
【文献】
1) Johnson TR:AJR Am J Roentgenol. 2012;199(5 Suppl):S3-8.
【解説】
小野寺麻希 札幌医科大学放射線診断学
小倉圭史 札幌医科大学附属病院放射線部