第1回「まずは症例をみてみよう」では,便秘(症)を画像で視認した上で診断することの大切さについて症例を用いて述べた。第2回の今回は,便秘とはどのような状態を指すのか,わが国のガイドラインのほか,米国の主なクリニックでの考え方も併せて示す。
便秘症は年齢を問わず,ほとんどの人に関連する多様性のある疾患であり,ある意味とらえどころがない疾患でもある。ガイドラインの定義にあてはまらなくても患者が便通に困難さを感じている場合はあるし,反対に,患者は「便通に異常はない」と感じていても,X線画像では腸管に便が詰まっていて便秘の治療対象となる症例もいる。
前回も述べたように,便秘は消化器内科医だけでなく,すべての診療科医が関わる疾患であり,医師以外でも医療に携わるあらゆる職種が関わるcommon diseaseである。患者は便秘だけで医療機関にかかることは多くない。だからこそ,ちょっとした心配りから,「便秘かもしれない」患者への治療の機会を提供することは大切である。もちろん,便通を確認する問診だけで診断に至る機会は多くないので,もっと積極的に便秘を診断するために,画像診断を含め女性への丁寧な問診,高齢者(特に寝たきり患者)の治療や排泄ケアなど,よりきめ細かな対応を心がけたい。
2023年,日本消化管学会の『便通異常症診療ガイドライン2023─慢性便秘症』(以下,ガイドライン)では,海外で用いられている便秘の定義なども鑑みて,便秘および慢性便秘症の定義が改訂された(表1)1)。
慢性便秘症は,一次性(原発性)便秘症として,機能性便秘症,便秘型過敏性腸症候群および非狭窄性器質性便秘症に分類される。また,二次性(続発性)便秘症として,薬剤性便秘症,症候性便秘症および狭窄性器質性便秘症に分類される。さらに症状の観点からも,排便回数減少型(便が「出ない」)と排便困難型(便が「出せない」)に分類されている1)。
また,Lemboらによれば図1のように分類される2)。原発性,続発性に大きく分類され,腸管拡張のない慢性特発性便秘と腸管拡張があるものにわけられている。
二次性便秘症として,その原因が進行結腸癌であることを否定するために,警告症状・徴候,危険因子に注意する診断のフローチャートが示され,そこに画像診断の必要性が説かれている。
慢性便秘症の腹部単純X線診断の有用性については水上の報告が参考になるが3),一般的には腹部X線や腹部CTでの画像診断は普及していない。
小児の便秘のガイドライン(ESPGHAN and NASPGHAN)では,診断には診断医の力量が左右するため,腹部単純X線を使用しないとされている4)。一方で,小児の便秘の診断と治療効果の判定に腹部単純X線は役立つことが報告されている5)。これらに共通する課題は,読影能力の向上のための教育の必要性である。
ガイドラインでは,RomeⅣをもとにした診断基準も示されている。排便時の中核症状と周辺症状を問診し,ブリストル便形状スケールを考慮して診断する。