神経解剖学者で元京都大学総長の平澤 興氏が自らの生い立ちを綴った自伝。1976年に新潟日報事業社から刊行された。写真は2010年発行の新装版
本書は元京都大学総長・平澤 興先生の自伝である。B6判で160ページほどの小冊子であるが、忘れられない一冊である。現在の上越市の田舎出の私は帰省の折に駅の売店にある書棚を眺めて地元のことを書いた本を買い求め、車中で読むのが何時しか楽しみの一つになっていた。その一冊である。
平澤先生のことはこの本で初めて知ったが、すでに神経内科医を目指していた私は、その神経解剖学の業績もさることながら、同じ新潟県の農村出身者として大きな心の拠り所を与えていただいた。まず先生は勉強法や進路などについて神経衰弱になるほど悩みながらも、真摯にそれと向き合い徹底的に考えることにより、悩みを乗り越えて大きく発展された。また、ご縁談での断り状、助教授昇進への謝絶回答など、自らに厳しく栄達を求めない生き方にも非常に元気づけられ、私も自分の短所をリストアップして自覚するようになった。そして、自然と誠心誠意ということが自らの生き方の指針となっていった。
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