2018年度から、新しい専門医制度が始まろうとしている。しかし、大学病院や都会への医師の偏在が起こるとして、制度開始は1年延期され、新整備指針には、「専門医の取得は義務ではない」との一文が明記された。
何故このような問題が起こるのか? 筆者は、日本専門医機構が医療の現場を十分に調査、検討せずに、新専門医制度を学会の専門医のための制度として導入しようとしたところに、基本的な問題があったように思う。
新専門医制度の導入によって専門医が増加したとき、医療の現場はどうなるのか。専門医の分布は、国民の医療のニーズに合ったものになるのか。国民にとって便利で役立つ制度になっているのか。そうした議論が十分に尽くされていないように思う。
筆者が最も恐れているのは、特定領域の専門医だけ増加・偏在して、国民が最も求めている、いつでも、どのような疾患でも取りあえず診てくれる総合診療医や救急医になる専門医が、さらに少なくなるのではないかということである。
長年、へき地・離島の救急医療に関与してきたが、今でもへき地・離島に勤務する医師は不足している。へき地・離島医療に専門医は要らないと筆者は考えている。地域包括医療の中心になるのはかかりつけ医であり、家庭医なのである。専門医は、地域の中核病院には必要であるが、かかりつけ医や家庭医がいなければ、患者のための医療にはならない。
そもそも大学病院が、医師の教育機関でありながら専門医の教育に専念し、総合診療医や救急医を育てるような環境になっていないことが基本的におかしいと思う。
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