日本医師会では平成24~25年周産期・乳幼児保健検討委員会で「母子保健法の課題とあるべき方向性─小児保健法の可能性を含めて」をテーマに検討を重ね、「成育基本法(案)」として答申にまとめた。この法案は、平成20年1月に作成した「小児保健法(仮称)」の考え方を踏襲し、胎児期・新生児期・乳幼児期・学童期・思春期を経て次世代を育成する成人期にまで至る「人のライフサイクル」を「成育」とした。
平成32年度末までに全国展開される子育て世代包括支援センターが扱う乳幼児(就学前)までの切れ目のない子育て支援から、さらに、思春期まで切れ目なく支援するために必要とされる諸事業を推進するための理念法である。
フィンランドのネウボラ〔(neuvo)=アドバイス、(la)=場所〕は、妊娠初期から、同じ保健師がすべての子ども・家族などに定期的に面談し指導する体制である。日本で同じものは無理としても、産婦人科、小児科、精神科等が連携協力して日本型ネウボラをつくり、問題のない子ども達・家族などがいつでも安心して相談できる場所とすべきである。もちろん、リスクのある人にはより必要な場所となるはずである。
妊娠初期から面談・相談することにより、安心して過ごし、出産し、その後の子育て不安の解消、思春期の性の問題、家庭内の問題などの早期発見をすることにより、望まない妊娠、それにより引き起こされる虐待やDVが予防できるのではないか、と考える。
国は少子高齢化社会が進んでいる現在「子育て・介護」の問題を解決し、高齢者、若者が安心して暮らせる「全世代型社会保障」をめざす、としている。今こそ厚生労働省、文部科学省の縦割り行政の壁を取り除き、切れ目ない支援をできるように成育基本法の早期成立が待たれる。そして、成育基本法が成立した時すぐに役に立つように、平成28~29年度母子保健検討委員会からの提案で米国小児科学会の「Bright Futures」ポケットガイド版を和訳し、ホームページに掲載する予定である。