日本学術会議は、①主たる目的が学術研究の向上発達、②研究者自身が運営、③構成員が100人以上、④学術誌の発行、等の要件を満たす団体を、学術研究団体(以下学会)として認定しています。わが国には平成28年の時点で2000強あります。学会はこれまで、学術誌の発行に加えて、学術集会の開催、基準・標準用語の策定などを通じて、研究者社会の代表として、学術分野の振興と社会への普及という点で重要な役割を果たしてきました。しかし、学術分野の細分化と融合が急速に進み、特に医学・生命科学の分野は、歴史的・質的な転換点を迎えていると思います。
このような中で、研究者は多数の学会の活動で忙しがり、学会の存続、学会員数の増加が目的化している側面もあります。このような現状は本末転倒ではないでしょうか。学会は学術分野の質を担保するためのツールとして機能してきましたが、目的やゴールではないはずです。学会の役割のひとつとして、次世代の研究者の勧誘と育成があります。研究者はどうしても専門馬鹿になりがちです。しかし、年に一度は専門外の領域に触れて予想を超えた発見を経験することが大切だと思います。学会の年次大会にはそのような役割もあると思います。
この観点で考えた時に、細分化されすぎた学会単位での年次大会には問題があります。その改善の試みのひとつが、生命科学系学会合同年次大会(ConBio2017)です。日本生化学会と日本分子生物学会とが合同主催し、35の生命科学系の学会が協賛しました。わが国で初めての学会連合による年次大会で、わが国の生命科学分野の総力を挙げた広い分野を網羅した年次大会となりました。ConBio2017では学会を超えたスケールメリットを追求しました。同様のことは、学術誌についても言えるかもしれません。わが国の多くの学会の学会誌は商業誌にまったく太刀打ちできず、学会の指導者も商業誌を第一選択としています。各学会は、そのあり方を根本から見直し、独自に活動すべき部分と、他学会と連帯して行うべき部分とを分けて考えてみることを提言させて頂きます。