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チャレンジ［炉辺閑話］
困っている他人に頼まれると「イヤ」と言えない性格が仇となって、いろんなことに首を突っ込んできた。
大学に入って最初に足を踏み入れたのはジャズドラムである。同郷の先輩が学生ジャズバンドを立ち上げ、その一員に引き込まれたのである。バンドの面白さは、辛い練習を繰り返していくうちにメンバーの息がぴたりと合い、完全に1つに融合して最高のパフォーマンスが達成されるといったところであろうか。さて、バンドでドラムを担当していると、演奏会の度にドラムセットの運搬に苦労することになる。中古の軽トラックを手に入れて通学に使ったりしているうちに自動車部の人達と親しくなり、いつの間にか部長にさせられてしまった。丁度その頃、ボート部の同級生や先輩の合宿所へ寝具の運搬などを頼まれるようになり、そこで興味半分にボートを漕いでいるうちにボート部に取り込まれ、奴隷のような厳しい練習に耐える羽目になってしまった。練習は今思い出しても二度と繰り返したくないが、なぜか懐かしく思い出されるのは不思議である。
ボートもジャズと同じで、最初はオールが合わずバタバタするものの、ある瞬間から漕ぎ手全員の息がぴったり合うとオールが急に軽くなり、船底から水の上を飛翔しているような、実に快適な音だけが聞こえるようになる。この瞬間、練習の辛さを超えた大きな喜びが湧きあがってきたことを思い出す。
一昨年から誰も引き受ける人がいないのではないか、と言われた日本専門医機構の理事長に推薦された。誰かがやらなければ、という思いで一年余り、関わってくれている多くの人達とともに、ただ働きを強いられながら苦労を重ねている。いつか全員の思いがぴたりと合い、最高の組織ができ上がることを念じつつ、あがきもがいている最中である。
