京都は歴史も古く、国宝や重要文化財が数多くあります。今回は遙か1000年昔の、戦いもなく文字通り平和な平安時代をテーマに決めて訪れることにしました。
この時代の貴族の日常は、毎日4時間ほどの勤務をこなし、その後は雅楽を演奏したり和歌を詠んだりして過ごしていたようです。雅楽というと、お正月に耳にすることが多いと思いますが、1400年ほど前に中国から伝わり、平安時代に完成した世界最古の音楽芸術で、その後、現在まで変化していません。笙、篳篥、龍笛を合奏することが基本になります。
笙は17本の竹を束ねた形をしていて、音色は天から差し込む光と表現されます。西洋のパイプオルガンのルーツと言われています。篳篥は縦笛の形で、音色は人の声、すなわち地上の音を表します。西洋のオーボエのルーツと言われています。龍笛は横笛の形で、天と地を行き交う龍の鳴き声を表し、天と地の間の空間を象徴しています。つまり、雅楽は天、地、空を演奏することにより、宇宙を創り出しているのです。
現代の雅楽奏者、東儀秀樹さんに「Jupiter」という曲を聴かせて頂く機会がありました。笙、シンセサイザー、ドラムの組み合わせで演奏されたので雅楽のようなイメージではないのですが、現代の音楽でもないような不思議な曲に完成されていました。この演奏を聴いていた周りの方々は、みなさん自然と涙が溢れてきた、とおっしゃっていました。意識外のところで感じ取られる、古代からの共感の音だったからでしょうか。
貴族が住んでいた住居は寝殿造で、寝殿の南側には白砂がひかれた庭と、夏には舟遊びができるような広い池があり、宴に興じたりしたようです。優雅ですね。現代ではそのような邸宅は残っていませんので、平安時代の別荘地である風光明媚な嵐山に行ってみました。
大堰川を眺めながらのんびりと、月が渡るようにみえることから名づけられた渡月橋を渡っていくと、船着場が見えてきます。横に水難の神様が祀られていますので、お参りしてから船に乗せて頂くというのが、現代版の船遊びのようです(写真1)。春には桜、夏には鵜飼、秋には紅葉と、四季折々楽しめそうです。
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