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心房細動専門外来を始めて[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.83

河野雅和 (服部記念病院副理事長・香川大学名誉教授(循環器腎臓脳卒中内科学))

登録日: 2018-01-05

最終更新日: 2017-12-22

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「心房細動」は心房が細かく、速く、不規則に動く頻脈性不整脈である。「心房細動」になると心房は毎分300〜500回ほどの頻度で興奮し一種の痙攣状態となり、房室結節で調整されて心室に伝わり、不規則になり、絶対性不整脈とも言われる。

高齢になるほど高頻度となり、現在わが国で200万人前後の方がこの疾患にかかられていると推測される。

心房細動が起こると心房収縮が十分に行われなくなり、心房内に血栓が形成され、それが脳などに運ばれて血管が詰まる心原性脳塞栓となり、非常に重篤な不整脈で寝たきりの主要な原因のひとつである。

ここ数年、その予防薬であるwarfarinに代わる新しい治療ツールとされる直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant:DOAC)が複数利用可能となり、心房細動に関する話題や企画が花盛りである。

香川大学を退官後、2016年より心房細動のみを対象とする、全国でも珍しい心房細動専門外来(紹介のみ)を開始した。不整脈外来は全国の大学病院や大規模病院ではほとんど開設されているが、心房細動専門外来、しかも紹介のみとしていたので、患者さまは多くは集まらないと考えていたが、想定外に多くの患者さまが近隣のクリニックから、さらに口コミにより約1年で44例の発作性もしくは慢性心房細動の患者さまが紹介され、大いに繁盛?している。

やはり高齢者が多く、85歳以上のsuper-elderlyでは塞栓リスクであるCHAD2スコア、出血リスクスコアであるHAS-BLEDスコアともに高く、また慢性心不全、慢性腎臓病の合併症が多かった。抗凝固療法はwarfarin 41%、DOAC 57%、残りはカテーテルアブレーションであった。ジギタリスによるrate controlは著減し、β遮断薬が高頻度である。この1年間で幸い若干の出血イベントはあったものの、塞栓血栓症は認めなかった。

DOACの登場により出血リスクは減少し、塞栓血栓症も著減したが、治療法に関してはカテーテルアブレーションや外科手術も含めて日々多くのエビデンスが集積されており、今後、実地臨床の場で個々の心房細動の患者さまに適したテーラーメード医療を実施していきたいと考えている。

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