昨年3月23日付のNature誌によると、日本からの論文の割合が2012年から2016年にかけて6%低下し、「日本の科学成果発表の水準は低下しており、この10年間で他の先進国の遅れをとっている」とのことである。また、2017年度版「科学技術白書」は、主要科学論文の引用件数の国別順位で、わが国は10年間で4位から10位に下がっており、基礎研究力の低下が著しいと指摘している。わが国からの研究成果の発信力低下は、かなり以前から指摘されていたことである。実際に私の専門である血液学におけるトップジャーナルであるBlood誌をみても、15年前の全盛期からすると、現在の日本からの論文数
1/3になっている。このようなことからも、日本の研究力低下は身近に実感できる事実である。
Nature誌によると、先進国におけるわが国の研究力低下はかなり深刻であり、科学分野における国際競争力の低下は切実である。その原因として、国からの研究費削減や大学における常勤ポストの極端な減少などが挙げられている。研究費に関して言えば、日本でもトップクラスの施設や機関には大型研究費が配分されているが、私どものようなごく一般に存在する臨床教室への配分は年々厳しくなっており、研究者の裾野を広げる努力も必要であろう。
しかしながら、もっと切実な問題は、若い世代が昔のように貪欲に論文を書く姿勢がないことである。いや、実際には英語での論文が書けないのではなかろうか。
このような一端は、私は若い世代の読書量の減少にも起因しているのではないかと思う。文化庁の調査では、日本人の平均読書量は年間12冊で、一冊も本を読まない層が47.5%存在し、読書離れが顕著とのことである。本を読むことは語彙を増やし、文章構成力を養い、何よりも想像力を逞しくするためには重要であり、しっかりとした論文を書くためには重要なトレーニングになると思う。優れた英文論文を書くためには、まずしっかりした日本語論文が書けることが肝要である。そのような意味からも活字中毒である私は、日本の科学技術力の向上のためにも若い世代に読書の重要性を強調したい。