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半年ばかり古都があった地域の幼稚園[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.137

近藤武史 (神戸大学大学院医学研究科講師)

登録日: 2018-01-09

最終更新日: 2017-12-25

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官舎も十分職場に近かったが、2年半ほど前にさらに職場に近い場所に転居した。神戸の中心市街は『方丈記』の福原京遷都のくだりで、「程せばくて条理を割るに足らず」と記載されたほどコンパクトである。治承年間に半年ほど都があったエリアに長女の通う幼稚園がある。「炉辺閑話2012」で「長女誕生回顧」として紹介した長女は、早いもので今や幼稚園の年長さんである。

娘を朝幼稚園に送るのは私の仕事であり、門の前でハイタッチをして、生えかわりつつある歯を含む笑顔をみて、毎日職場へ向かい、職住近接で死因究明の研鑽を積んでいるところである。わずか数分の道程であるが、6歳の女児との会話は片言隻句であってもリフレッシュにつながる。その記録を簡潔に残しておきたい。

「負うた子に教えられて浅瀬を渡る」とはよく言ったもので、人生後半期に突入した人間がとうの昔に忘れていたことを、長女は思い出させてくれる。突拍子もない話題が突如出現する。「ろくろ首ってほんまにおるん?」と問われ、いるかも、と答える。模範解答はないだろうが、言下に否定してはいけないことは明らかである。急に「奇麗な石!」と道にしゃがみこんだり、雨の日に水がたまってミッキーマウスの顔に見える道路のくぼみを教えてくれたり。子どもらしくいろんな生き物が好きで、ミミズの話、ダンゴムシが好きな話、アマガエルをどう捕まえるかという話題。スズメに近づくとすぐに逃げられる、と教えてくれることも。秋になり、「夏セミが道で死んでたけど、セミはあれは長生きなん?」と深妙なことをぽつりと。子ども独特の言い換えも面白い。たとえば、職員室「先生たちが勉強するところ」、電線「でんきがとおるひも」。地下鉄の話をすると、「地下って知っとるで、もぐらのおるところやろ」。

新春、そんな長女もあと数カ月で小学生。新たな友人達と楽しく小学校生活を送ってほしいと願うばかりである。娘の手をひいてあと数カ月登園を続けることとする。

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