株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

忘れられない「しくじり症例」[プラタナス]

No.4888 (2017年12月30日発行) P.1

柏木秀行 (飯塚病院緩和ケア科部長)

登録日: 2017-12-30

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 私も臨床医の端くれである。「どうだ、参ったか!」というような武勇伝を書きたいものだ。だが、10数年の臨床経験を振り返っても、ゾッとする経験や、恥ずかしさに顔から火が出る体験ばかりが思い浮かぶ。ここは開き直って、身の丈にあった原稿にしよう。

    卒後4年目の私は救急当直に明け暮れており、排便中の突然の腹痛を主訴にwalk inで受診をした、ADLの自立した82歳を担当した。下腹部の疝痛で、痛みと悪寒、多量の発汗で起立困難となったが徐々に改善したらしい。当院の循環器内科で、陳旧性心筋梗塞のフォローをされている方だった。

    診察時点では症状は改善しており、バイタルは血圧134/76mmHg、脈拍108回/分(不整)、呼吸数22回/分、体温35.0℃(室内気)。診察時、腹部は上腹部〜右季肋部にかけて圧痛があり、筋性防御はない。AST 38U/L、ALT 30U/L、LDH 266U/L、ALP 411U/L、γ-GTP 28U/Lと肝胆道系酵素が上昇。そのほかの血液検査、血液ガスに異常はない。

    来院後、悪寒戦慄と末梢チアノーゼがあり、臨床像としては敗血症を疑った。CTでは肝内胆管がわずかに拡張していたが、胆囊摘出後の影響もあり診断に確信は持てなかった。肝胆道系酵素の上昇と合わせて、胆管炎と評価し各種培養採取と抗菌薬を投与して入院とした。

    残り383文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    関連求人情報

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top