皮膚疾患の多くは皮疹を見た瞬間に診断がつく。しかし、皮膚科医になってみると、診断が分かり教科書に書いてある通りの薬を処方しても治らない患者がたくさんいる。
激しい痒みを伴う全身の湿疹を主訴に受診した40歳代の男性。診察した瞬間に貨幣状湿疹と診断がついた。しかし、教科書通りにステロイド外用薬による治療を行ってもまったく効果がなく、患者にも私にとってもつらい日々がその後何カ月も続いた。
わらにもすがる思いで、何らかの経口摂取物質による遅延型アレルギーを原因とした湿疹の可能性も考えて、当時のジャパニーズスタンダードシリーズ(接触アレルギーを起こしやすい約30種のアレルゲンからなる)でパッチテストをしたところ、塩化第二水銀に陽性反応がみられた。水銀アレルギーの多くは遠い昔にマーキュロクロム(いわゆる赤チン)に含まれる水銀で感作されていることを示すもので、現代の日常生活で水銀を経口摂取することはあまり想像できなかった。
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