高齢の慢性腎臓病(CKD)患者には,低栄養,筋力の低下そして日常生活動作(ADL)の低下が関与しており,それらは生命予後に関係している
CKDに伴った蛋白質とエネルギー源の貯蔵が減少した栄養障害の病態がprotein energy wasting(PEW)である
PEWへの対応には,栄養状態と運動機能の改善が必要である
高齢者の慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)進行を阻止するためには,加齢による腎機能低下について考慮する必要がある。CKD患者は透析に至るリスクが高いだけでなく,高齢者では心血管疾患による死亡を増加させることが日本の研究で報告されている1)。高齢のCKD患者にとって,CKDの進行阻止は重要な課題である。高齢者は,合併症,栄養障害,日常生活動作(activities of daily living:ADL)の低下,介護などの問題を認めることが多い。高齢CKD患者の透析導入後3カ月での死亡には,低アルブミン血症のほか,日常生活自立度が関与しており,高度障害は軽度障害と比べてリスク比が10.6であった2)。高齢者のCKD進行を阻止するためには,栄養およびADLの問題を併せて考える必要がある。
CKD患者は低栄養が認められやすい傾向にある。高齢CKD患者は,加齢により,さらにこの傾向が強くなる。低栄養では炎症が関与することで,生命予後が低下するほか,筋力の低下からADLが悪化する。高齢透析患者では,低栄養が死亡の危険因子である3)。また,高齢CKD患者では,透析後にADLが低下し,それとともに死亡率が上昇することが報告されている4)。このように,CKD,低栄養,ADL,生命予後は密接な関係にある。近年この関係に関して,protein energy wasting(PEW),サルコペニア,フレイルなどの概念が出てきているため,まず整理する。
PEWとは,国際腎臓病栄養代謝学会(International Society of Renal Nutrition and Metabolism:ISRNM)によると,CKDに伴った蛋白質とエネルギー源の貯蔵が減少した栄養障害と提唱されている5)。PEWの診断基準には,①生化学検査,②体格の変化または体重の減少,③筋肉量の減少,④栄養摂取量の減少,が含まれている。3項目以上が満たされた場合にPEWと診断される(表1)。PEWには様々な要因が影響しており,低栄養だけでなく,尿毒素,炎症,蛋白異化亢進,代謝性アシドーシス,身体機能の低下,透析,合併症が関与した病態である(図1)5)。
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