仙尾部奇形腫は,仙骨先端より発生する奇形腫で,殿部より外方へ突出または骨盤腔内・腹腔内へ進展する。本来は良性腫瘍であるため予後良好ととらえられがちであるが,実際には軽症から,多量出血,高拍出性心不全やDICなどにより重症かつ致死的となるものまで,バラエティーに富む。また,長期的に再発,悪性転化や直腸膀胱障害,下肢運動障害などが発症する症例もある。
今回,厚生労働科学研究費難治性疾患等政策研究事業「小児期からの希少難治性消化管疾患の移行期を包含するガイドラインの確立に関する研究」(研究代表者:田口智章)の中で診療ガイドラインを作成することとなり,本疾患独自の問題点である,リスク因子,帝王切開の推奨,腫瘍栄養血管の先行処理,IVR治療,長期予後などを包括して,6つのクリニカルクエスチョン(CQ)を作成した。しかし,希少疾患ゆえに十分なエビデンスレベルが担保された文献がほとんどないため,実臨床における問題点を重点に和文や症例報告なども盛り込んでレビューを行った。
本疾患ではその希少性から,これまで明確な診療指針がなく,専門家以外の一般医家には情報が乏しいのが現状である。本疾患に遭遇した際には,下記のURL1)にアクセスしてご活用頂きたい。
【文献】
1) 仙尾部奇形腫診療ガイドライン作成グループ:仙尾部奇形腫診療ガイドライン. Ver. 3.3. 2017. [http://www. jspnm.com/topics/data/kaiin20170501.pdf]
【解説】
文野誠久*1,田尻達郎*2 *1京都府立医科大学小児外科学内講師 *2同教授