司馬遼太郎の代表的長編歴史小説を原作として、2009年から3年にわたって放送。秋山好古・正之兄弟と正岡子規たちの青春群像を描く。DVD-BOX、ブルーレイBOXがポニーキャニオンより販売
このドラマは、こんなプロローグから始まる。
「まことに小さな国が、開化期をむかえようとしている。…明治維新によって、日本人ははじめて近代的な『国家』というものをもった。…不慣れながら『国民』になった日本人たちは、日本史上の最初の体験者としてその新鮮さに昂揚した。この痛々しいばかりの昂揚がわからなければ、この段階の歴史はわからない。社会のどういう階層のどういう家の子でも、ある一定の資格を取るために必要な記憶力と根気さえあれば、博士にも官吏にも軍人にも教師にもなりえた。この時代のあかるさは、こういう楽天主義から来ている。…」
今の我が国には、この楽天主義がない、時代に明るさがない、国民に昂揚感がない。私は産業精神医学を専門としているので、日々、会社で心を病む人々に相対している。一生懸命に働きさえすれば必ず幸せになるはず、という希望を持つことができないこの時代では、日々の労働に楽しみや生き甲斐を見つけることができず、病んでいく。
しかし時代を歎いていても始まらない。「働き方改革」が進行中である。プレミアムフライデーや時短だけですますのではなく、「一生懸命働けば幸せになれるだろう」という感覚を、どうすれば国民みんなが持つことができるようになるのか?を常に意識して働かねばならない。少なくとも、社会に蔓延する「勝ち組・負け組」的な二極分化による「あきらめ感」は希望の種を潰す。幸福とは何も出世することでも裕福になることだけでもない。私はこのドラマを見るたびに、これからの若者達が活き活きと働き、果てしない希望を持って生きていけるようなるにはどうすればよいかと考えるし、また私自身の労働のスタイルをも考え直さなくてはならないなあと自戒するのである。