近年,C型肝炎における抗ウイルス治療として,従来のインターフェロン(IFN)治療に代わって直接作用型抗ウイルス薬(DAA)治療が主流となり,高い著効率が得られている。しかし,生命予後に大きく寄与する発がん抑制効果に関しては,IFN治療著効例で発がん率が低下することが明らかとなっている一方で,DAA治療ではいまだ意見がわかれている。IFN治療とDAA治療では,薬剤の作用機序がまったく異なることに加えて,DAA治療著効例には発がんの高リスク群である高齢者や肝線維化進展例が多く含まれることも一因である。
最初の報告では,肝癌に対する根治治療後にDA A治療を受けた患者において,短期間で高率に肝癌が再発したことが示され,DAAはむしろ発がんを促進させるとして大きな議論を呼んだ1)。考察として,急激なウイルス排除が肝内の免疫状態を変化させ,潜在的な肝癌に対する免疫監視機構がなくなり発がんが促進される,と述べられている。
その後,複数のグループから,DAA治療群では無治療群よりも肝癌再発が抑制されることが示された。最近では,IFN治療群とDAA治療群を比較した場合,発がん率,ならびに再発率ともに両群間に差がないことが示され,DAA治療においてもIFN治療と同様に発がん抑制効果が得られる可能性が示唆された2)。しかし,これらは短期間での現象であり,DAA治療の発がん抑制効果を明らかにするためには,さらに長期間の経過観察を行った,コホートにおける検討が必要である。
【文献】
1) Reig M, et al:J Hepatol. 2016;65(4):719-26.
2) Nagata N, et al:J Hepatol. 2017. [in press]
【解説】
山田涼子 大阪大学消化器内科