B型慢性肝炎における抗ウイルス療法の目標は,肝炎の活動性と肝線維化進展の抑制による慢性肝不全の回避ならびに肝発癌の抑制である
抗ウイルス療法の短期目標は,①ALT持続正常化(30U/L以下),②HBe抗原陰性かつHBe抗体陽性,③HBV-DNA増殖抑制の3項目であり,長期目標はHBs抗原消失である
2017年にテノホビル ジソプロキシル(TDF)のプロドラッグであるテノホビル アラフェナミド(TAF)が承認され,TDFからTAFに切り替えることで腎機能障害や骨密度低下の改善が見込まれる
B型肝炎ウイルス(HBV)の再活性化は,癌化学療法・免疫抑制療法後の合併症として,一部の症例においては劇症肝炎に至り,致死的な経過をたどることが報告されている。ステロイド単独投与に際しても,HBs抗原の有無は必ず確認すべきである
治療前スクリーニング検査によるHBs抗原陰性例のうち,HBc抗体陽性あるいはHBs抗体陽性例(両方陽性を含む)においては,定期的(1~3カ月に1回)なHBV-DNA定量検査を行い,「20IU/mL(1.3Log IU/mL)以上」になった時点で核酸アナログの投与を開始する(preemptive antiviral therapy)
B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)感染症は,急性感染のみならず,持続感染(キャリア)となることが特徴である。さらに持続感染では,無症候性キャリア,慢性肝炎,肝硬変,肝発癌,非活動性キャリア,潜伏感染,再活性化などの多彩な病態を示し,病態形成にはHBVの活動性とこれに対する宿主の免疫応答が関与している(図1)。すなわち,HBV-DNA増殖が活発だが免疫応答が未発達なため肝炎を起こさない「免疫寛容期」(無症候性キャリア),免疫応答によりHBVを排除しようとして感染肝細胞を攻撃して活動性肝炎が発症する「免疫応答期」,HBe抗原セロコンバージョン後に肝炎が鎮静化(ALT 30U/L以下)しHBV-DNA量が2000IU/mL(3.3Log IU/mL)以下に抑制される「低増殖期」(非活動性キャリア),HBs抗原が消失する「寛解期」に加え,低増殖期に移行した後にHBV-DNAが再増殖し肝炎を起こす「再活性化期」等の各病期に分類される。肝発癌率が低下する低増殖期または寛解期に移行させることがHBV持続感染者に対する抗ウイルス療法の治療目標である。本稿では,2017年6月に改訂された「B型肝炎治療ガイドライン 第3版」1)および抗ウイルス療法の実際について解説する。