母子感染防止事業の導入により,乳児のHBs抗原陽性率・小児期の発癌は激減した
HBワクチンの定期接種導入により,16歳以上のHBs抗原陽性者は半分以下に低下することが期待される
定期接種対象者の拡大,ワクチンエスケープ変異株への対応が今後の課題である
2016年10月1日からB型肝炎ワクチン(HBワクチン)は定期接種化された。対象は2016年4月1日以降に誕生した0歳児である。定期接種は生後2,3,7~8カ月に行う。一方,HBキャリアの母親から生まれた児に対しては生後0,1,6カ月で接種するので注意が必要である。したがって,4~8月に出生した児(HBキャリアの母親以外から生まれた児)は所定(生後2,3,7~8カ月)より短い期間で定期接種を終了するか,3回目の接種を任意接種の形で行う必要がある(図1)。
定期接種の導入からまだ1年半しか経過していない現時点では,定期接種の影響を評価することは難しい。本稿では前半でこれまで母子感染防止事業として行われてきた接種のインパクトと今後期待されることを,後半で今後の問題点について述べることとする。