HANDとは,HIV関連神経認知障害である。診断には,脳の高次機能のうち2領域以上の認知障害を確認する必要がある
日本で実施したJ-HAND研究では,組み入れ症例の26.1%がHANDと診断された。そのうち半数は無症候性である
HANDのリスク因子は,加齢,ウイルス学的治療失敗,M.I.N.I(精神疾患簡易構造化面接法)に該当の3項目が挙がった
HANDにならないための因子(改善因子)は,抗ウイルス薬を確実に実施すること,就労することであった
日本のHIV/AIDS患者の高齢化は進行しており,HANDに向き合った診療を行う一方で,HANDの治療方法の開発が望まれる
HANDとは,HIV関連神経認知障害(HIV associated neurocognitive disorder)であり,HIV感染症に伴う認知機能障害を包括して指す用語である。先行研究であるCHARTER試験は,1316人を対象とした大規模試験であり,HIV患者の47%がHANDと診断されている1)。近年,わが国におけるHANDの現状について調べるために,国立国際医療研究センターを中心に,多施設共同試験(J-HAND研究,主任研究者:木内 英)が実施された2)。
HIV感染症患者の認知機能障害は,AIDSという疾患が明らかになった当初より知られていた。HIV脳症と言われていた大脳皮質下性認知障害では,認知・運動・行動異常などがみられ,進行した場合には全般性認知症になる。AIDS患者の20~30%が発症していたと言われている。
1990年代後半よりART(anti-retroviral therapy,複数の抗HIV薬を組み合わせて内服する治療)が始まり,HIV感染者の生命予後が急速に改善している。しかし,ARTを実施しているにもかかわらず軽症型の神経認知障害を呈する患者がみられた。このような経過から,HANDという疾患概念が確立し,HIV/AIDS患者診療における課題となってきている。