初期研修医の時、頑固な便秘で酸化マグネシウムでもセンノシドでもピコスルファートでもどうしても出ない寝たきりの高齢患者さんに、おそるおそる潤腸湯という漢方薬を処方したことがある。それまで「出ない」と困っていたが1~2日後には「下痢で困る」と言われてしまった。その後、服薬量を調節して事なきを得たが、診療人生で「効いてびっくり」はこれだけではなかった。
訪問診療で伺った陳旧性脳梗塞のあるKさん(81歳男性)から、特に麻痺側の足が冷たいと言われて足を拝見すると、麻痺側のみならず健側の足趾にも立派な凍瘡があった。便秘もあったこの方には桃核承気湯という漢方薬を処方。この漢方薬は便通を良くしながら血の巡りをよくする作用があり、便秘と凍瘡が一緒に解決し大変喜ばれた。西洋医学では異なる病態とされる訴えが、一つの漢方薬で一石二鳥と解決することがある。これは東洋医学の理論体系と西洋医学のそれが異なるからだが、西洋医学を主に勉強してきた私には当初とても新鮮な驚きを与えた。
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