□症候が頻拍によるものである場合には,酸素投与開始(O2),心電図モニターを装着(monitor),静脈路確保を行い,急変に備える。必要があれば鎮静薬を投与して,迅速な同期下電気ショック(同期下カルディオバージョン)を行う。
□上記と同時に,循環器医にコンサルトする。
□モニター心電図を装着し,必要に応じて酸素投与と静脈路確保を行う。12誘導心電図を記録して,循環器医へのコンサルトを考慮する。
□心電図のQRSの幅,RR間隔の整/不整などを判読して,必要に応じて迷走神経刺激(Valsalva法など)や薬剤投与を検討する。アミオダロン,プロカインアミド,ニフェカラント,硫酸Mg,ATP製剤,β遮断薬,Ca拮抗薬,ジギタリスなどが用いられる。
□心室頻拍(VT)でバイタルが不安定な場合は,無脈性となり心停止に移行する可能性があるので,特に注意を要する。
□心停止ではない場合でも心室頻拍は重篤な不整脈であり,その後心室細動に移行する可能性もあるので,不安定な場合には同期下電気ショック(カルディオバージョン)が推奨される。血圧等の血行動態が安定しているときは,バイタルサインや心電図モニター等の監視下に,抗不整脈薬の投与が行われる。
□心室頻拍などの頻脈性不整脈では,プロカインアミドを用いることもある。
□多形性心室頻拍は,頻拍中のQRS波形が刻々と変化してQRS波形が基線を中心にねじれているように見える。非持続性で自然停止することが多いが,時に心室細動に移行する。
□QT延長を伴う多形性心室頻拍はtorsades de pointes(TdP)と呼ばれ,先天性QT延長症候群と薬剤や電解質異常等による後天性QT延長症候群がある。発作が持続しているときには電気治療が優先されるが,再発性反復性の場合には原因の治療と同時に,薬物治療が行われる。
□脈のあるTdPでは,以下のように処方する。なお,QT延長を伴ったTdPの際には徐脈により相対的にQT延長が著明になっていることも多く,薬剤治療だけに頼らず経静脈ペーシングにより脈拍を速く保つことも重要である。また,QTが延長した原因検索と原因治療も重要である。
□状態が安定している場合,血行動態の安定や動悸症状の改善治療目的でレートコントロールを行う場合がある(図2)。その場合には,Ca拮抗薬(ベラパミル,ジルチアゼム),またはβ遮断薬(プロプラノロール,ランジオロール)を使用する。
□状態が安定している場合,薬剤によるリズムコントロール(薬剤により不整脈を停止させて正常洞調律に復帰させる方法)も考慮される(図2)。
□生理検査:12誘導心電図検査を行う。
□画像:胸部X線,心臓超音波検査などを実施する。
□心室頻拍等の頻脈性不整脈を認めた場合,必ずしもすべてに薬物治療を行うわけではない。血圧低下等,頻拍に伴い患者の状態が不安定な場合,抗不整脈薬を静注しその効果を待つ時間的な余裕はなく,また抗不整脈薬の心抑制作用のために状態を悪化させる可能性も高い。この場合,迅速な除細動器による電気治療〔同期下電気ショック(同期下カルディオバージョン)〕を直ちに行うべきであり,薬物治療は推奨されない。
□抗不整脈薬は,その薬効である陰性変時作用とともに,心機能を低下させる陰性変力作用(心抑制作用)を併せ持つことを常に考慮する必要がある。
□WPW(Wolf-Parkinson-White)症候群では,房室伝導のみを抑制するCa拮抗薬やβ遮断薬は禁忌である。
□動悸・頻脈では,命に関わる致死性不整脈への移行も考えられ,その後も注意深いモニタリングが必要になる場合が多い。循環器医へのコンサルトを考慮し,必要に応じてモニタリングを継続し,集中治療も検討する。
□心筋梗塞(虚血性心疾患)や心筋症,さらには電解質異常や薬剤相互作用など,不整脈の原因の存在が疑われる場合には,その原因の検索・治療も必要となる。継続的な治療を考慮する。
□既に動悸症状が治まっている場合でも,命に関わる不整脈の可能性を常に考慮する。また,重篤でないと判断された場合でも,その動悸・頻脈の原因,頻度,治療の可否を検討するため,心臓超音波検査や24時間ホルター心電図等の精査が必要となるので,循環器医への受診を勧める。
【参考】
▶ 日本循環器学会, 他:循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2002─2003年度合同研究班報告)不整脈薬物治療に関するガイドライン. Circ J. 2004;68(Suppl Ⅳ):981-1053.
▶ 日本循環器学会, 他:循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007─2008年度合同研究班報告)循環器医のための心肺蘇生・心血管救急に関するガイドライン. Circ J. 2009;73(Suppl Ⅲ):1361-456.
▶ 日本蘇生協議会, 監:JRC蘇生ガイドライン2015. 医学書院, 2016.
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