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皮疹

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  • ■緊急時の処置

    【アナフィラキシー】

    アナフィラキシーを疑ったら,直ちに酸素投与,モニター装着,静脈ラインの確保を行う。気道が確保できない場合には気管挿管を,舌浮腫や声帯浮腫などで挿管できない場合には輪状甲状靱帯切開か気管切開を行う。

    ショックであれば,大量輸液を行う。

    アドレナリン:適応は,ショック,呼吸困難,チアノーゼ,喘鳴,嗄声,犬吠様咳嗽,強い腹痛や繰り返す嘔吐など,症状が重篤な場合である。過去にアナフィラキシーの既往がある場合や,症状の進行が急速な場合には中等度の症状であっても投与を考慮する。筋注後10分程度で血中濃度は最高となり,40分程度で半減する。症状が続く場合には追加投与する。

    一手目:ボスミン®注(アドレナリン)1回0.01mg/kg(大腿中央の前外側に筋注,最大成人0.5mg,小児0.3mg)

    H1受容体拮抗薬:クロルフェニラミン,ジフェンヒドラミン静注などがある。皮膚症状を緩和するが,呼吸器症状には無効である。

    β2アドレナリン受容体刺激薬:サルブタモール吸入などがある。喘鳴などの下気道症状があるときに使用する。上気道閉塞の場合にはアドレナリンの吸入を行う。

    グルココルチコイドは,以下のように処方する。

    一手目:ソル・コーテフ®静注用(ヒドロコルチゾン)1回100mg(静注,小児5mg/kg),またはソル・メドロール®静注用(メチルプレドニゾロン)1回125mg(静注,小児1mg/kg)

    【壊死性筋膜炎】1)

    速やかに抗菌薬を投与し,外科か整形外科に外科的デブリードマンを依頼する。抗菌薬の種類については確立されていないが,起炎菌がはっきりしない間はメロペネムとクリンダマイシンを用いる。

    MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の可能性があれば,バンコマイシンを加える。

    一手目:メロペン®点滴用バイアル(メロペネム)1回20mg/kg(静注,8時間ごと),クリンダマイシン注1回600~900mg(静注,8時間ごと)併用

    二手目:〈一手目に追加〉バンコマイシン点滴静注用1回15mg/kg(静注,6~8時間ごと)

    起炎菌が判明したら抗菌薬を狭める。

    溶連菌感染であればペニシリンGを用いる。

    ■検査および鑑別診断のポイント

    【アナフィラキシー】

    皮膚症状だけであれば,蕁麻疹である。アナフィラキシーは皮膚症状に加えてABCDのいずれかの異常をきたす。場合によっては皮膚症状がないこともあり,診断が難しくなる。

    【壊死性筋膜炎】

    深い層にある筋膜や皮下脂肪の壊死を起こしながら広がっていく。そのため,蜂窩織炎と異なり,圧痛が皮膚表面の発赤の範囲を越えて存在する場合には壊死性筋膜炎を強く疑う。

    CTで筋膜周囲の炎症所見や膿瘍形成,ガス産生の有無を確認する。

    ■落とし穴・禁忌事項

    【アナフィラキシー】

    β遮断薬を使用中の患者はアドレナリンが効かない可能性がある。代わりにグルカゴン1~5mg(20~30μg/kg)を5分以上かけて静注後,5~15μg/kgで持続点滴する。

    【壊死性筋膜炎】

    感染は急速に進行し,多臓器不全から死に至ることもあるため,迅速な診断が必要である。皮膚所見の割に発熱や頻脈,低血圧など全身の重症感が強かったり,説明のつかない急速な痛みの増悪を認めたりしたときには,壊死性筋膜炎を疑う。外科的処置までの時間をできるだけ短くすることが大切である。

    ■その後の対応

    【アナフィラキシー】

    二相性アナフィラキシーは,成人で最大23%,小児で最大11%のアナフィラキシーに発生する。アナフィラキシーの遅延反応でアドレナリン投与を要したのは9.2%であり,そのうちの76%は4時間以内であるが,7.4%は4~10時間のうちに重篤な反応をきたしている2)

    グルココルチコイドは作用発現に数時間を要し,二相性アナフィラキシーを予防する可能性があるが,その効果は立証されていない3)

    【壊死性筋膜炎】

    高気圧酸素療法やグロブリン治療が有効かどうかに関しては結論が出ていない。

    ■文献・参考資料

    【文献】

    1) David N, et al:サンフォード感染症治療ガイド2015. 第45版. ライフサイエンス出版, 2015.

    2) Simons FE, et al:J Allergy Clin Immunol. 1998; 101(1 Pt 1):33-7.

    3) Brown SG, et al:J Allergy Clin Immunol. 2013; 132(5):1141-9.

    【参考】

    ▶ 日本アレルギー学会:アナフィラキシーガイドライン2014年版, 2014.

    [http://www.jsaweb.jp/common/fckeditor/editor/filemanager/connectors/php/transfer.php?file=/uid032318_616E67313131372833292E706466]

    【執筆者】 林 峰栄(沖縄ERサポート)

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