□ニューモシスチス肺炎(Pneumocystis pneu-monia:PCP)やサイトメガロウイルス(CMV)肺炎は細胞性免疫障害患者(ステロイドや免疫抑制薬投与,悪性リンパ腫,骨髄・臓器移植後,HIV感染症など)に日和見的感染症として発症する。
□従来,Pneumocystis cariniが原因となるカリニ肺炎と呼ばれていたが,現在では真菌の一種Pneumocystis jiroveciiによるニューモシスチス肺炎と呼称されている。
□多くの健常人は幼少期にCMVの初感染を受けたのち潜伏感染の状態にあるが,細胞性免疫障害が加わるとCMVが再活性化し発症することがある。
□細胞性免疫障害患者では,胸部単純写真では所見が不明瞭なことが多いため,発熱や呼吸器症状があれば胸部単純写真が正常でもCTでの評価を検討してよい1)。
□低酸素血症,肺障害を反映し,LDHやシアル化糖鎖抗原KL-6の上昇,拡散障害(DLco<75%),肺胞気動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)開大などがみられる。
□発熱,呼吸困難感,乾性咳嗽,頻呼吸や稀に湿性咳嗽や血痰など。
□聴診所見は乏しいが,時にfine crackleを聴取する。
□非HIV患者では数日~1週間程度と比較的急性に発症するが,HIV患者では症状が軽度で数週間~数カ月の経過をたどることもある。
□β-D-グルカン上昇。
□胸部単純写真で肺門部・中下肺野優位の両側びまん性すりガラス影で,肺水腫と間違われやすい。
□胸部CTで"地図状"分布を示す両側びまん性のすりガラス陰影や進行に伴い肺胞隔壁が肥厚しcrazy paving patternを呈する。
□嚢胞病変(pneumatocele)を形成し,気胸を合併することもある。
□確定診断には喀痰や気管支肺胞洗浄液,経気管支肺生検組織中のDiff-Quik染色やGrocott染色で菌体を確認する。
□遺伝子診断として気道検体のPCR法やLAMP(loop-mediated isothermal amplification)法も利用可能であるが迅速診断には不適。
□初感染後に潜伏感染したCMVが細胞性免疫障害のある患者で再活性化し,間質性肺炎を起こす。
□発熱,呼吸困難感,乾性咳嗽,頻呼吸などがみられる。
□典型的には両側性肺門部優位のすりガラス陰影でPCPとの区別が困難なことが多い。
□喀痰,気管支肺胞洗浄液や経気管支肺生検組織中にowl's eye(ふくろうの目)と呼ばれる巨細胞封入体を証明することや免疫組織染色で診断を確定する。
□臨床診断にはCMV抗原血症(pp65抗原陽性細胞数の増加)を利用することが多い。この検査は造血幹細胞移植後のCMVモニタリングとしても用いられる。
□CMV抗体やウイルス分離,遺伝子診断などが利用できるが,初感染後に終生感染が持続するため血液,唾液や尿からCMVが検出されるだけでは病的意義は低い。
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