発熱,咳嗽,喀痰などの急性気道症状を認め,胸部画像検査(X線やCTなど)で肺の急性浸潤影を認めるものを肺炎,認めないものを気管支炎と言う。かぜ症候群や急性上気道炎に続発することもある。
炎症が下気道主体のため,上気道炎症状に比べ咳嗽が強く,喀痰や発熱を伴いやすい。
外来治療が可能な症例から入院治療や集中治療が必要な症例まで様々なので,全身状態,経口摂取量,呼吸・循環・意識状態などより重症度の評価を行う。
急性気管支炎であれば原則的に抗菌薬は不要で,去痰薬などの対症療法が中心となる。ただし,副鼻腔炎を合併する場合には抗菌薬が必要になることがある。
急性肺炎では,初期治療における抗菌薬の選択は患者背景(年齢,基礎疾患の有無,ワクチン接種歴など)や重症度,疫学や地域の流行状況を考慮する。急性肺炎でも軽症で,地域の流行状況からウイルス性肺炎が疑わしい場合は,抗菌薬を投与することなく経過観察することも可能ではある。年代別小児肺炎の原因菌では,新生児期はB群溶血性連鎖球菌やグラム陰性腸内細菌が多いため,ペニシリン系やセファロスポリン系抗菌薬の使用が選択される。乳児期から4歳まではウイルス性が多いが,細菌性ではインフルエンザ桿菌や肺炎球菌が主体であるため,ペニシリン系抗菌薬が第一選択となる。5歳以上ではインフルエンザ桿菌,肺炎球菌に加えて肺炎マイコプラズマも多くみられるため,ペニシリン系のみではなくマクロライド系抗菌薬の使用も考慮される。
免疫不全を有する基礎疾患を持つ場合には,炎症反応や症状が軽微で,背景にある免疫不全の種類によって易感染性を示す微生物が異なる。血液疾患の化学療法中の好中球減少時には,緑膿菌などのグラム陰性桿菌や黄色ブドウ球菌,アスペルギルスを考慮する。造血幹細胞移植後には日和見感染症が増加し,時期によって原因微生物が異なる。神経筋疾患のある児では肺炎の発症リスクが高く,緑膿菌や耐性菌の保菌も増えるが,抗緑膿菌薬の初期治療は推奨されない。
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