1990年代に入って,気管支喘息(喘息)に対する治療は吸入ステロイド(inhaled corticosteroid:ICS)の普及とともに大きく進歩した。しかし,いまだにわが国での喘息死は年間1000人前後を推移している。難治性喘息は喘息患者の約5%を占めていると言われ1),その治療の重要性は高まる一方である。
わが国の『喘息予防・管理ガイドライン2021』(JGL2021)では,難治性喘息を「コントロールに高用量ICSおよび,長時間作用性β2刺激薬(long-acting β2 agonist:LABA),加えてロイコトリエン受容体拮抗薬(leukotriene receptor antagonist:LTRA),テオフィリン徐放製剤(sustained-release theophylline:SRT),長時間作用性抗コリン薬(long-acting muscarinic antagonist:LAMA),経口ステロイド(oral corticosteroid:OCS),生物学的製剤の投与を要する喘息,またはこれらの治療でもコントロール不能な喘息」と定義している2)。また,喘息管理の国際指針(Global Initiative for Asthma:GINA)2021では,これを重症喘息と位置づけている。
各国のガイドラインにおいて共通しているのは「適切な診断,アレルゲン・薬剤・タバコなどの増悪因子の回避や排除,合併症の治療,吸入手技およびアドヒアランスの確認を行った上で,高用量ICS+LABAによる治療によってもコントロール不良な喘息,または高用量ICS+LABAからステップダウンできない喘息」ということである。
これらをふまえて『難治性喘息診断と治療の手引き〔第2版〕2023』では,難治性喘息を「コントロールに,高用量ICSおよびLABA,必要に応じてLTRA,SRT,LAMA,OCS,生物学的製剤の投与を要する喘息,またはこれらの治療でもコントロール不良な喘息」かつ「コントロールを不良にさせる因子に充分対応するにもかかわらず,なおコントロール不良であるか,治療を減少させると悪化する喘息」と定義しており,本稿でもこの定義を用いる。