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特集:難治性喘息患者への生物学的製剤使いわけ

No.5243 (2024年10月19日発行) P.18

坂本慶太 (日本赤十字社医療センター呼吸器内科)

出雲雄大 (日本赤十字社医療センター呼吸器内科部長)

登録日: 2024-10-18

最終更新日: 2024-10-16

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2013年大分大学医学部卒業。大分赤十字病院で初期研修,その後,国立国際医療研究センター病院の後期研修レジデントおよびフェローを経て,2021年4月より現職。(坂本,写真も)

1 気管支喘息(喘息)とは

  • 慢性の気道炎症を本態とし,主な症状は喘鳴,咳嗽,呼吸困難などである。夜間から早朝に生じやすく,自然に,あるいは治療によって改善する可逆的な性質を持つ。

2 喘息の治療

  • 治療の基本は吸入ステロイド(ICS)である。症状に合わせて治療ステップを見きわめ,気管支拡張薬や長時間作用性抗コリン薬(LAMA),ロイコトリエン受容体拮抗薬などを追加していく。

3 難治性喘息とは

  • コントロールに高用量ICSおよびLAMA,その他の薬剤や生物学的製剤の投与を要し,かつ増悪因子に対応してもなおコントロール不良で,治療強度を弱めると悪化する喘息を指す。難治性喘息は,喘息患者全体の約5%を占める。

4 難治性喘息の治療

  • 「治療ステップ4」に準じて全身性ステロイドや気管支熱形成術,生物学的製剤などによる加療を検討する。生物学的製剤は全身性ステロイドより優先して導入されるべき長期管理薬に位置づけられている。

5 生物学的製剤の種類

  • 難治性喘息に使用可能な生物学的製剤には,オマリズマブ(抗IgE抗体),メポリズマブ(抗IL-5抗体),ベンラリズマブ(抗IL- 5受容体α抗体),デュピルマブ(抗IL-4受容体α抗体),テゼペルマブ(抗TSLP抗体)の5種類がある。

6 5剤の使いわけ

  • 主に2型炎症優位な病態での有用性が期待されるが,抗TSLP抗体は2型炎症以外の病態でも一定の効果が期待できる。使いわけには,末梢血好酸球数や血清総IgE値,特異的IgE値などに加えFeNOを測定することが重要で,併存症への適応も考慮するとよい。

1 はじめに

1990年代に入って,気管支喘息(喘息)に対する治療は吸入ステロイド(inhaled corticosteroid:ICS)の普及とともに大きく進歩した。しかし,いまだにわが国での喘息死は年間1000人前後を推移している。難治性喘息は喘息患者の約5%を占めていると言われ1),その治療の重要性は高まる一方である。

わが国の『喘息予防・管理ガイドライン2021』(JGL2021)では,難治性喘息を「コントロールに高用量ICSおよび,長時間作用性β2刺激薬(long-acting β2 agonist:LABA),加えてロイコトリエン受容体拮抗薬(leukotriene receptor antagonist:LTRA),テオフィリン徐放製剤(sustained-release theophylline:SRT),長時間作用性抗コリン薬(long-acting muscarinic antagonist:LAMA),経口ステロイド(oral corticosteroid:OCS),生物学的製剤の投与を要する喘息,またはこれらの治療でもコントロール不能な喘息」と定義している2)。また,喘息管理の国際指針(Global Initiative for Asthma:GINA)2021では,これを重症喘息と位置づけている。

各国のガイドラインにおいて共通しているのは「適切な診断,アレルゲン・薬剤・タバコなどの増悪因子の回避や排除,合併症の治療,吸入手技およびアドヒアランスの確認を行った上で,高用量ICS+LABAによる治療によってもコントロール不良な喘息,または高用量ICS+LABAからステップダウンできない喘息」ということである。

これらをふまえて『難治性喘息診断と治療の手引き〔第2版〕2023』では,難治性喘息を「コントロールに,高用量ICSおよびLABA,必要に応じてLTRA,SRT,LAMA,OCS,生物学的製剤の投与を要する喘息,またはこれらの治療でもコントロール不良な喘息」かつ「コントロールを不良にさせる因子に充分対応するにもかかわらず,なおコントロール不良であるか,治療を減少させると悪化する喘息」と定義しており,本稿でもこの定義を用いる。

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