□肺良性腫瘍(表)1)は,きわめて緩徐かつ膨張性に発育し,周囲組織への浸潤や組織破壊を示さない。そのほとんどの成因は不明であるが,一部の腫瘍には遺伝子異常が認められる。
□頻度的には,肺過誤腫が最も多く,ついで硬化性肺胞上皮腫が認められ,全肺腫瘍の1~2%,呼吸器外科手術例の1.2%を占める2)。
□50~60歳代に好発し,男女比は2~3:1である。
□軟骨,脂肪,結合織,平滑筋などの間葉系の少なくとも2種類の成分を含む腫瘍で,軟骨もしくは粘液腫状軟骨が主体である。
□発生部位は,90%が肺末梢で,約10%が気管支内に無茎性ポリープ状に発生する。
□単発例が一般的であるが,多発例もみられる。
□大部分は無症状で偶然発見されるが,気管支型は気管支閉塞に伴う症状(咳,痰,無気肺)を呈することがある。
□画像的には,類円形,分葉状を呈し,境界明瞭な孤立陰影で,ポップコーン様石灰化は特徴的所見である(図)。遺伝子学的には高頻度にt(3;12)(q27-28;q14-15)を呈する。
□以前,硬化性血管腫(sclerosing hemangioma)と呼ばれていたが,2015年のWHO改訂で硬化性肺胞上皮腫と名称変更された。
□肺胞上皮由来の上皮性腫瘍で,肺末梢に発生する。
□人種的に欧米人より東アジア人に多く,主に30~60歳代の中年女性(男性の5~6倍)に好発し,時に血痰を呈する。
□組織学的には,充実性,乳頭状,硬化性,出血性の4パターンが認められる。
□円形,境界明瞭で均一な陰影を呈し,造影CTで内部陰影の造影効果や,腫瘍辺縁に微小血管造影像を呈することが多い。
□気管支動脈造影では,メロンの皮の網目状という特徴的な所見を呈することがある。
□MRIではT1強調像で筋肉よりもやや高信号,T2強調像で高信号を示す。
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