□慢性呼吸不全は「安静時における室内気吸入下の動脈血液ガス分析で酸素分圧(PaO2)が60Torr以下の低酸素血症(=呼吸不全)が1カ月以上持続する状態」である。
□対処の主体は酸素療法であり,在宅酸素療法(home oxygen therapy:HOT, またはlong-term oxygen therapy:LTOT)を実施している患者数は全国で16万人(2014年時点, 日本産業・医療ガス協会推定)に達するが,実際には呼吸不全の基準を満たさない患者にも導入されていることや入院中の患者数は不明であるため,実態は明らかではない。
□二酸化炭素分圧(PaCO2)が45Torr以上と以下でⅠ型呼吸不全,Ⅱ型呼吸不全と分類され,Ⅱ型呼吸不全には換気補助療法が適応となる。
□呼吸困難が代表的な症状であり,労作時に特に顕著で,進行すると安静時にも認められる。ただし,緩徐に進行した際には訴えが乏しいことがある。
□重度の呼吸不全ではチアノーゼを呈する。
□呼吸パターンの変化(浅速呼吸など)を見ることが多いが,Ⅱ型呼吸不全では意識障害や呼吸抑制などCO2ナルコーシスをきたしうる。頭痛,傾眠,羽ばたき振戦など特徴的な自覚・他覚症状を認める。
□動脈血液ガス分析(arterial blood gas analysis:ABGA)においてPaO2<60Torrを呈することを呼吸不全と定義する。代替指標としてパルスオキシメーターでSpO2<90%もよい指標となるが,体動の影響,頻呼吸などの呼吸状態の影響,一酸化炭素中毒や,貧血など他の要因で測定値は変動し,PaO2を正確に反映しないため,極力ABGAを実施することが望ましい。
□ABGAによりPaCO2やpH,HCO3−等の重要な指標も評価可能である。特にPaCO2>45TorrはⅡ型呼吸不全の基準であるため,PaO2と同時に確認する必要がある。pHやHCO3−は腎などによる代償機構が働いているか,慢性経過か急性経過かなどが重要な指標となる。
□近年,経皮電極を用いたPaCO2測定(tcpCO2)も利用されている。
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