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膿胸[私の治療]

No.5282 (2025年07月19日発行) P.44

串間尚子 (福岡大学筑紫病院感染制御部/呼吸器内科准教授)

登録日: 2025-07-21

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  • 膿胸とは,壁側胸膜と臓側胸膜で形成される胸膜腔が細菌などに感染し,膿性胸水が貯留した状態である。病因は①肺炎の胸膜への波及を含む肺感染症,②外科手術後感染,③胸部外傷や食道損傷,などである。急性では発熱や胸痛,炎症反応の上昇がみられ,膿の貯留が著明な場合や長期間経過すると肺の膨張不全により呼吸困難を伴うこともある。

    ▶診断のポイント

    胸部単純X線やCTで膿の貯留を確認し,胸腔穿刺で膿性の胸水を確認する。

    超音波検査では,CTよりも簡便にフィブリン膜や隔壁の描出,胸膜肥厚の確認ができる。

    胸腔穿刺は,著明な出血傾向,凝固異常などがなければ必ず行う。

    多くの場合は細菌性で,胸水中の好中球数が増加している。リンパ球優位の場合は結核性胸膜炎や悪性胸水が鑑別疾患の上位に挙がる。

    亜急性~慢性の膿胸では,結核の除外診断を行う。胸水中のアデノシンデアミナーゼ(adenosine deaminase:ADA)が40~50IU/L以上のとき,結核性胸膜炎の可能性が高い。

    ピットフォールとして,胸水中の好中球が優位でADAが上昇しているときは,膿胸あるいは細菌性胸膜炎に随伴した胸膜炎を考える。

    胸水のグラム染色や培養による原因菌の推定は初期抗菌薬の選択のために有用だが,診断の要件はあくまで貯留液が膿性であることであり,菌の証明は必須ではない。

    結核や真菌の可能性も念頭に置き,それらを網羅したオーダーを行う。一般的な注意事項は,目的菌を明瞭に検査技師へ伝えること,である。

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