□気管支拡張症は慢性進行性の気道疾患であり,非可逆性の異常な気管支の拡張と定義される。
□慢性的な喀痰の貯留とそれに伴う咳が特徴的であり,気道における細菌の増殖で感染増悪を繰り返すことにより,さらなる難治化に陥る1)。
□疾患の進行に伴い頻回の入院が必要となるなど日常生活やQOLが障害される。重症例では呼吸機能の低下や低酸素血症を伴う慢性呼吸不全に陥り,死に至る場合もある。
□喀血の原因としても重要である。
□気管支拡張は様々な原因によって生じる。乳幼児期の肺炎に起因する例,びまん性汎細気管支炎(diffuse panbronchiolitis:DPB),Kartagener症候群を含む原発性線毛機能不全症候群(primary ciliary dyskinesia:PCD),嚢胞性線維症(cystic fibrosis,日本ではきわめて稀),免疫グロブリン欠損症・低下症などが挙げられる2)。
□アレルギー性気管支肺アスぺルギルス症,関節リウマチの肺病変(リウマチ肺),肺非結核性抗酸菌症なども原因となる。
□治療方針を決定するために原因となる疾患の検索が重要である。
□慢性に持続する膿性痰と咳が特徴的。
□進行すると労作時の息切れを伴う。
□急性増悪時には発熱と喀痰増加を伴うことが多い。
□血痰,喀血を伴うことがある。
□DPBでは高率に慢性副鼻腔炎を合併する。
□胸部単純X線,胸部CT画像による形態学的な違いにより,円柱状(cylindric),瘤状(varicose),嚢状(cystic)に分類される1)。特発性肺線維症などでみられる牽引性気管支拡張は本症とは異なる。
□胸部単純X線およびCT画像では拡張した気管支は短軸断面では円形の輪状陰影として描出される(図a)。長軸断面では肥厚した気管支壁が線路のように並んで見える"tram line"所見として描出される。
□進行した例では嚢状に拡張した気管支が描出されることがある(図b)。嚢状気管支内に大量の喀痰が貯留すると鏡面像(ニボー)を呈する。
□侵襲が強いため気管支造影検査は行われなくなった。
□増悪時には喀痰の微生物学的検査を行う。通常の市中肺炎同様,インフルエンザ菌,肺炎球菌,モラクセラ・カタラーリスなどが原因となる。進行例では緑膿菌などが検出されるようになる1)。
□呼吸機能検査では閉塞性換気障害を示すことが多い。進行すると肺活量(vital capacity:VC),努力性肺活量(forced vital capacity:FVC)が減少し,拘束性もしくは混合性換気障害を示す。
□血中好酸球増多や血清IgE高値を認める場合,気管支喘息やアレルギー性気管支肺アスぺルギルス症の合併が推定される。
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