□膠原線維性大腸炎(collagenous colitis)は,1976年にLindströmらによって提唱された。顕微鏡的大腸炎(microscopic colitis)は1980年にReadらによって初めて命名された疾患である。microscopic colitisには,lymphocytic colitisとcollagenous colitisとの2つの疾患が含まれている1)2)。
□顕微鏡的大腸炎の真の頻度は明らかになっていないが,1980年度後半には10万人に1.1人の割合であったのが2001年終わりには10万人に19.6人となるなど,増加傾向にある。近年の北米のデータでは,lymphocytic colitisの発症率は年間12.6人(対10万人),collagenous colitisの発症率は年間7.1人(対10万人)であった。
□IL-6遺伝子多型,HLA-DQ2遺伝子,serotonin reuptake transporter遺伝子が発症に関与しているとの報告がある。TNF-α,IL-6,IL-17Aなど様々な炎症性サイトカインが病態に関与しているとされている3)。
□lymphocytic colitisでは,上皮内リンパ球が20細胞/100上皮細胞数以上を診断基準としている。collagenous colitisでは,リンパ球浸潤に加えて組織学的に粘膜上皮直下のcollagen bandの肥厚(>10μm)を特徴としている。
□lymphocytic colitisには男女差はない。collagenous colitisは女性に多くみられる。
□lymphocytic colitisとcollagenous colitis共に40歳以上で多くみられ,60~70歳がピークである。年齢とともに頻度が増加する。
□基本的に,プロトンポンプ阻害薬などの薬剤関連によることが多い。
□軽微な慢性炎症が持続するが,大腸発癌のリスクは低いとの報告がある。
□わが国での顕微鏡的大腸炎の認知度は徐々に高まっている。
□慢性,持続性の水様性下痢がみられる。しばしば,血便,腹痛や体重減少を伴う。
□血液検査:CRP,赤沈の上昇,軽度の貧血がみられ,抗核抗体が陽性となる場合がある。ただし,いずれも本疾患に特異的な検査所見とは言えない。
□内視鏡:従来,注腸および大腸内視鏡検査所見などの画像検査では異常所見を認めないことが特徴とされてきた。したがって本症例を疑った場合は,生検組織による評価が必要である。近年,mucosal tearsまたはlinear mucosal defect(粘膜が裂けたような形態を示す)などと表現される縦走潰瘍を呈する症例も存在することに注目すべきである。
□症状改善のためには,原因薬剤の中止が第一である。
□原因薬剤として,プロトンポンプ阻害薬,β遮断薬,抗血小板製剤,スタチン製剤などが報告されている。
1190疾患を網羅した最新版
1252専門家による 私の治療 2021-22年度版 好評発売中
PDF版(本体7,000円+税)の詳細・ご購入は
➡コチラより