Peutz-Jeghers症候群(Peutz-Jeghers syndrome:PJS)は,食道を除く全消化管の過誤腫性ポリポーシスと皮膚・粘膜の色素斑を特徴とする稀少疾患(出生5万〜20万に1人)で,常染色体顕性遺伝形式をとる。
ポリープのがん化は稀だが,ポリープによる腸重積や腸閉塞,貧血,低蛋白血症が問題になる。近年はバルーン小腸内視鏡によるポリープ治療が普及してきた。
消化管,乳房,子宮,卵巣,精巣,膵臓,肺などの悪性腫瘍リスクが高く,適切なサーベイランスが必要である。
STK11遺伝子の生殖細胞系列の病的バリアントを原因とする常染色体顕性遺伝性疾患だが,発症者の17〜50%は家族歴のない孤発例である。腹部症状を呈する患者で口唇・指尖等に色素斑を認めれば,家族歴がなくても鑑別疾患に挙げる必要がある。
色素斑は出生時には目立たず,5歳以前に発生し思春期まで増加する。成人すると目立たないか,美容目的のレーザー治療により消失している場合もあるが,頰粘膜には残りやすい。
本症候群の過誤腫性ポリープは粘膜上皮の過誤腫的過形成,粘膜筋板からの平滑筋線維束の樹枝状増生を特徴とし,Peutz-Jeghersポリープと呼ばれる。有茎性・亜有茎性ポリープが多く,肉眼的にも樹枝状に枝わかれする場合がある。ポリープは胃に24%,小腸に96%,結腸に27%,直腸に24%の割合で認められる。特に小腸は内腔が狭く,腹腔内での固定が弱いため,腸重積を生じやすい。
診断基準1)は,色素斑・特徴的な病理所見を伴う過誤腫性ポリープ・家族歴のうち2つ以上を満たす場合か,色素斑・家族歴がなくても複数のポリープで特徴的な病理所見が確認できた場合,すべてなくてもSTK11遺伝子の生殖細胞系列の病的バリアントが確認できた場合で,以下の鑑別すべき他疾患を除外できればPJSと診断できる。鑑別すべき疾患は,家族性大腸腺腫症,若年性ポリポーシス症候群,Cowden症候群/PTEN過誤腫症候群,結節性硬化症,炎症性ポリポーシス,serrated polyposis症候群,Cronkhite-Canada症候群,遺伝性混合性ポリポーシス症候群,Laugier-Hunziker-Baran症候群である。
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