□低カルシウム(Ca)血症は,神経・筋の興奮性亢進によるテタニーを主症状とし,重症例では全身性痙攣をきたす場合もある。副甲状腺ホルモン(para-
thyroid hormone:PTH)作用の低下,ビタミンD作用の低下,腎不全,腎からの喪失や骨への蓄積などによりもたらされる。
□血清リン(P)濃度,PTH濃度,尿中Ca排泄や骨X線所見などから原因疾患を鑑別し,これに基づき治療を行う。
□神経・筋の興奮性亢進により,テタニーがみられる。程度は,口囲などの軽いしびれ感からてんかん様の全身性痙攣発作まで様々である。
□神経・筋の興奮性亢進を検出する方法として,外耳孔前部の顔面神経幹を叩打した際の顔面筋の収縮を見るクヴォステク(Chvostek)徴候,血圧測定用のマンシェットを,収縮期血圧以上の圧で3分以上カフを維持し,助産婦手位の誘発を観察するトルソー(Trousseau)徴候がある。
□血清Caのうち生理機能に関わるのは約50%を占めるイオン化Caである。残りの大部分はアルブミンなどの蛋白に結合しているため,低アルブミン血症が存在する場合は,以下の補正式による補正Caで評価する。
□低Ca血症と同時に血清Pが中央値より高値なら腎不全か副甲状腺機能低下症,低値ならビタミンD作用低下か腎性高Ca尿症,骨への移行による。
□血清Pが高めを示した場合,GFRが30mL/分/1.73m2未満なら腎不全,これ以上なら血中PTHを測定する。
□血中intact PTHが30pg/mL未満ならPTH分泌低下による副甲状腺機能低下症,それ以上なら偽性副甲状腺機能低下症と診断される。
□PTH分泌の低下による場合,頸部への放射線照射や手術,がんの浸潤などがあれば,これらによる二次性副甲状腺機能低下症と診断される(図2)。
□二次性副甲状腺機能低下症が除外され,先天性奇形を伴う染色体異常症,Ca感知受容体遺伝子の活性化変異など単一遺伝子異常による例,低マグネシウム(Mg)血症による例,自己免疫性多腺性内分泌不全症I型に伴う例なども除外されれば,特発性副甲状腺機能低下症と診断される(図2)。
□偽性副甲状腺機能低下症が疑われれば,100単位PTH負荷によるEllsworth-Howard試験を行い,尿中P排泄とともにcAMP排泄反応が低下していれば偽性副甲状腺機能低下症Ⅰ型,Albright骨異栄養症を合併していればIa型,なければIb型と診断される。
□Ellsworth-Howard試験でP排泄反応が低下しcAMP排泄反応の低下がなければ偽性副甲状腺機能低下症Ⅱ型と診断される。
□血清Pが中央値より低下している場合,尿中Ca排泄の亢進があれば腎性高Ca尿症による腎からの喪失と診断される。
□血清P低値傾向かつX線所見でくる病・骨軟化症の所見があればビタミンD作用低下と診断され,血清25水酸化ビタミンD濃度が低下していればビタミンD欠乏症と診断される。
□血清25水酸化ビタミンD濃度の低下がなく,かつ血清1,25水酸化ビタミンD濃度が低下していればビタミンD活性化障害によるビタミンD依存症I型,高値を示せばビタミンD受容体異常によるビタミンD依存症Ⅱ型と診断される。
□X線写真上,くる病・骨軟化症の所見がなければ,骨へのCa沈着亢進による。
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