□神経組織に由来する腫瘍として髄外腫瘍(ex-tramedullary tumor:EMT)と髄内腫瘍(intra-medullary tumor:IMT)がある。
□脊髄腫瘍は髄内,髄外とも変化に富む。筆者は髄内腫瘍と髄外腫瘍ともに約300件の治療経験がある。短い章にまとめることは過単純化のきらいがあるが,600件の累積をごく短く要約した形で記載する。
□髄外腫瘍の中で頻度の高いものは神経鞘腫ならびに髄膜腫である。
□髄内腫瘍にはグリオーマ(神経膠腫)とそれ以外のものがあるが,その挙動は非常に多彩である。
□神経鞘腫は脊髄から枝分かれする神経の髄鞘をつくるシュワン細胞に由来する腫瘍である。同じように神経の鞘からできるものであってもより線維成分が多い神経線維腫もその亜型として存在する。
□神経鞘腫に関しては剖検例の16%にみられたとの報告もあり,30対の脊髄神経の中のどれかにできる確率は高い。
□発育様式は多様であり,硬膜内髄外であることが多いが,硬膜外にも伸びて脊椎椎間孔を超えてダンベル型の形を形成することもある。C1/C2高位では硬膜外に存在することが多いし,仙椎部分では硬膜のスリーブ(神経根の出ていく部分)で囊胞性であることが多い。また,ときには神経根が脊髄の中から出ていく部分に沿って脊髄内に部分的にくいこむような形で発育して髄内腫瘍の様相を呈することもある。
□画像診断では,神経鞘腫は脊髄周囲の髄液腔に突出した形で古典的にゴブレット・サインといわれる酒杯状の形で見えることが多い。
□画像上の特徴は,一方で髄膜腫はテイル・サインという言葉に表現されるように,付着部位が裾野のある形をしていることが多いという点である。
□髄膜腫は硬膜由来の腫瘍であるが,実際にはくも膜のcap cellといわれる細胞からできており,これは神経根が硬膜を貫く部分の周囲から起こることが多い。
□したがって,髄膜腫であっても実際に手術をしてみると神経根の近傍に付着部があることをしばしば経験する。
□髄外腫瘍治療においてはまず脊髄に対する圧迫を除くのが一義的な目的である。神経鞘腫は変化に富み,髄外腫瘍であっても実は経験と技術が重要である。
□神経鞘腫は柔らかく可動性に富んでいることも多いので,宿主となっている神経とともに硬膜貫通部で固定されているか否か,画像で判断し,やわらかく内容を吸引できる性状で可動性に富んでいるなら,椎弓を開くレベルを最小限とし,さらに筋層構築的棘突起椎弓形成術(myoarchitectonic spinolaminoplasty:MSLP)を用いて再建する。
□また,ダンベル腫瘍の場合は脊柱管の内部腫瘍を除くことを優先し,可及的に後方のアプローチMSLPによって腫瘍を除き,脊柱管の外に残存部の増大があれば前方や側方から改めてそれらに最適なアプローチで全摘出する。
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