□アカシジアは,動かずにはいられない衝動があり,同じ坐位,立位姿勢をとり続けることができない状態である。このため身体を絶えず揺り動かし,体位を変え,下肢を組んだり,直したり,歩き回ったり,を繰り返す。
□抗精神病薬の副作用で生じるものが多いが,初報告は薬剤開発以前の1901年,Haškovec1)による2例である。彼は両症例に共通する落ちつきのない過剰な運動に着目し,「じっと座っておれない;not+sitting still」を意味するギリシャ語をもとに"akathisia"と呼称した。後にDelay & Deniker2)は過剰運動が持続性(tasikinesia)であることを特徴に加えた。
□パーキンソン病,脳炎,脳炎後パーキンソニズム,頭部外傷などの中枢神経疾患でも非薬剤性に出現する。
□薬剤性アカシジアの誘発可能薬(表)3):主に抗精神病薬が引き起こす。
□急性ジストニアの頻度:抗精神病薬服用者の20~30%4),定型抗精神病薬では20~40%。慢性・遅発性・離脱性アカシジア:30%程度5)。
□ドパミン受容体サブタイプであるD2受容体の遮断作用が強い高力価定型抗精神病薬で生じやすい。
□非定型抗精神病薬では不快症状が軽い傾向。
□わが国での非定型抗精神病薬によるアカシジア出現率はリスペリドンが22.9%,ペロスピロン40%,クエチアピン5.2%,オランザピン17.6%3),アリピプラゾール28.1%。
□メトクロプラミドなどの制吐剤,三環系抗うつ薬,SSRIでも生じる。
□ベンゾジアゼピンなど依存性物質の退薬症状として出現することもある。
□パーキンソン病:非薬物性アカシジア合併頻度はLang & Johnson6)の報告で26%,Comella & Goetz7)は45%と報告したが,うち40%で症状の日内変動を認め,RLSが含まれる可能性がある。抗パーキンソン病薬開始後の発現が多いが,オン・オフとの明らかな関連はない。
□血清鉄の低下や糖尿病も誘因。
□年齢,性別,人種差による発症頻度の差異はない。
□中脳皮質系ドパミンニューロンの障害が関与8)。
□遅発性アカシジアはこの系におけるシナプス後ドパミン受容体の感受性亢進で出現。
□抗精神病薬の中止による離脱性アカシジアは,薬物中断のため感受性亢進が顕在化,病態は遅発性アカシジアと同じ。
□SSRIはセロトニン系増強によるドパミン系抑制のためアカシジアを生じる。
□GABA系機能低下,ノルアドレナリン系機能亢進説がある。
□RLSは間脳から脊髄に投射するドパミンニューロンの障害が一因。
□このドパミン系は脊髄後側索および側副枝を下行し,感覚情報処理や運動調整を行う。
□視床下部,新皮質およびセロトニン系の背側縫線核にも投射。
□落ち着かない気分,内的緊張感,不快感,下肢をいつも動かしていたい衝動。
□同じ坐位,立位姿勢を取り続けることができない。
□下肢ムズムズ感,灼熱感。
□坐位:常に上下肢や体幹を動かし,体位を変え,じっと座っていることができない。
□立位:上下肢や体幹を動かし,重心を移動させ,足踏みし,姿勢を頻繁に変え,歩き回る。
□運動効果:症状は歩行や運動で軽減する3)。
□二次障害:不眠,苦痛によるうつ,不安,焦燥。
□アカシジアを直接支持する検査所見はない。
□鑑別目的で頭部MRI(正常),血液生化学検査(血清鉄低下,耐糖能異常)。
□薬剤誘発アカシジアの診断基準:上記のような自・他覚症状があり,原因薬が特定できる9)。
□薬剤誘発アカシジアの分類:①急性アカシジア:投薬開始,増量から6週以内に発現(投薬開始,増量後数日以内に生じるものが多い)。②慢性アカシジア:3カ月以上症状が持続。③遅発性アカシジア:投薬開始後3カ月以上を経て出現。④離脱性アカシジア:抗精神病薬,抗コリン薬,ベンゾジアゼピン系薬物などを3カ月以上投薬した後減量し,6週間以内に出現。
□精神症状,抗精神病薬による中枢神経刺激作用(activation syndrome),下肢静止不能症候群(restless legs syndrome:RLS)など。
□RLSとの相違:下肢ムズムズ感や動かしたい衝動があり,運動で軽減する点はアカシジアと共通,夕方~夜間に悪化する点がアカシジアと異なる。
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