□赤芽球癆は造血幹細胞・前駆細胞の質的・量的異常に基づく難治性貧血(骨髄不全症候群)のひとつであり,骨髄における赤血球系造血の選択的減少と,それに起因する網赤血球の減少および正球性正色素性貧血を呈する疾患である。
□赤芽球癆の病因・病態は多様であり,治療方針を決定するためには病因の特定がきわめて重要である。
□赤芽球癆は先天性と後天性に大きく区分され,後天性は特発性と基礎疾患を伴う続発性がある。また,臨床経過から急性と慢性にわかれる。
□後天性慢性赤芽球癆の罹患率は,人口10万人当たり0.6人と言われる特発性再生不良性貧血よりさらに低い稀な疾患である。急性赤芽球癆の罹患率は不明である。
□わが国における成人の後天性慢性赤芽球癆の3大病因は特発性,胸腺腫関連,リンパ系腫瘍で,発症年齢中央値は60歳代である。大きな性差はない。
□赤芽球癆による自覚症状は,貧血に基づく全身倦怠感,動悸,めまいなどである。
□特発性慢性赤芽球癆は顔面蒼白などの貧血に伴う症候のほかには身体所見に乏しいが,続発性慢性赤芽球癆では基礎疾患に応じた症候が認められる。
□末梢血液学的検査では正球性正色素性貧血と網赤血球数の著減(1%未満)を認め,骨髄検査で赤芽球の著減(5%未満)を認める。慢性赤芽球癆は診断時点で既に重度の貧血であることが多い。
□特発性赤芽球癆において白血球数と血小板数は正常範囲であるが,続発性赤芽球癆では基礎疾患により,白血球数や血小板数の異常がみられることがある。
□胸部X線検査やコンピュータ断層撮影(CT)により,胸腺腫やリンパ節腫脹,臓器腫大の有無をチェックする。
□赤芽球癆の発症時期と,胸腺腫あるいは悪性リンパ腫の診断時期は必ずしも同時ではなく,わが国における胸腺腫関連赤芽球癆の半数以上は胸腺腫摘出術後に赤芽球癆の診断がなされている1)2)。
□末梢血で2000/μL以上の顆粒リンパ球増多が6カ月間以上持続,あるいは顆粒リンパ球数が2000/μL未満であってもクローン性が証明できれば,大顆粒リンパ球性白血病関連赤芽球癆と診断する。
□ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus:HIV)感染症,臓器移植,化学療法後など免疫不全状態において,ヒトパルボウイルスB19持続感染による慢性赤芽球癆を併発することがあり,血中にヒトパルボウイルスB19のウイルスDNAが検出される。
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