単クローン性免疫グロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance:MGUS)は,血清に単クローン性蛋白質(M蛋白)を認めるが,多発性骨髄腫でみられる貧血などの臓器障害を認めない。異常となる免疫グロブリンのアイソタイプからnon-IgM,IgM,軽鎖サブタイプにわけられる。MGUSは多発性骨髄腫,マクログロブリン血症,原発性アミロイドーシスなどのリンパ形質細胞腫瘍の前駆状態と考えられる。
M蛋白を認めるが,貧血・腎機能障害・高カルシウム血症・溶骨病変は認めないことで診断される。
MGUSの有病率は,米国の50歳以上の人口における大規模臨床研究では,50~59歳で1.7%,60~69歳で3.0%,70~79歳で4.6%,80歳以上で6.6%と年齢とともに上昇する1)。また,男性で3.7%,女性で2.9%と性差がみられる。
MGUSそのものは治療の適応とはならないが,コントロール群と比較して,多発性骨髄腫に進行するリスクが6.5倍となる2)。10年間で10%,20年間で18%,30年間で28%,35〜40年間で36%の進行のリスクがあり,経過観察が必要と考えられる。進行のリスク因子としては,①血清M蛋白が1.5g/dL以上,②血清遊離軽鎖κ/λ比の異常,がある。non-IgGのサブタイプもリスク因子として考えられる。non-IgM MGUSでは,20年間での進行のリスクが,2リスク因子ありで30%,1リスク因子で20%,リスク因子なしで7%であった。IgM MGUSでは,20年間での進行のリスクが,2リスク因子ありで55%,1リスク因子で41%,リスク因子なしで19%であった。
多発性骨髄腫の早期治療介入の必要性が注目されており,MGUSの進行の評価についても十分な検討が必要と考えられる。
MGUSの多発性骨髄腫などの悪性腫瘍への進行以外にも,M蛋白の臓器沈着によるダメージも考慮を要する。心機能障害(ALアミロイドーシス),腎機能障害(monoclonal gammopathy of renal significance:MGRS),神経障害(monoclonal gammopathy of neurological significance:MGNS)などの症状について,脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP),尿蛋白などのバイオマーカーも含めて経過をみる。
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