慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia:CML)は,造血幹細胞におけるフィラデルフィア染色体の形成により発症する。自然経過では慢性期から数年の経過で移行期,急性期へと進展して致死的な経過をたどる。しかし,チロシンキナーゼ阻害薬での治療により,ほとんどの患者で疾患がコントロールでき,長期生存が得られる。
多くは無症状の慢性期に,血液検査異常をきっかけに診断される。白血球増多,幼若白血球の出現,および好塩基球増多を認める。血小板数は正常か増加している。末梢血または骨髄検査でフィラデルフィア染色体,もしくはBCR::ABL1融合遺伝子を証明することで診断が確定する。骨髄検査は病期決定のために必須である。
本稿では慢性期の治療について概説する。現在,初期治療として利用可能なチロシンキナーゼ阻害薬は下記【治療の実際】の一手目に示す4種類である。これらの選択肢の中から,疾患のリスク,患者背景,めざすべき治療のゴールを考慮して,最適な治療薬を選択する。
治療中は有害事象の発現に留意しながら,分子学的モニタリングを適切に実施し,治療奏効を判定する。有害事象を認めた場合は,対症療法,一時休薬,治療薬の減量,あるいは治療薬変更を考慮する。患者の服薬アドヒアランスに問題がなく,適切な治療効果が得られない場合は治療薬を変更する。治療抵抗性症例にはBCR::ABL1遺伝子変異解析を行い,変異プロファイルをもとに適切な治療薬を選択する。2種類以上のチロシンキナーゼ阻害薬に不耐容あるいは抵抗性の場合は,STAMP阻害薬であるセムブリックスⓇ(アシミニブ塩酸塩)を選択できる。また,深い寛解を獲得維持できた患者については,無治療寛解が得られる可能性がある。
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