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キャッスルマン病[私の治療]

No.5224 (2024年06月08日発行) P.44

矢野真吾 (東京慈恵会医科大学腫瘍・血液内科教授)

登録日: 2024-06-06

最終更新日: 2024-06-04

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  • 原因不明のリンパ増殖性疾患で,成熟B細胞や形質細胞が多クローン性に増加し,リンパ節腫大をきたす。病変が1つの領域に限局する単中心性キャッスルマン病(unicentric Castleman disease:UCD)と,複数の領域に広がる多中心性キャッスルマン病(multicentric Castleman disease:MCD)に大別される。MCDは背景疾患の有無により,POEMS症候群関連MCD,HHV-8関連MCD,特発性MCDに分類される。さらにTAFRO症候(発熱,全身性浮腫,血小板減少,腎障害,臓器腫大)を認めるMCDを,TAFRO症候を伴う特発性MCDと診断する1)

    ▶診断のポイント

    【症状】

    UCDは限局性の腫大したリンパ節または腫瘤を認めるが,自覚症状は乏しい。

    MCDは発熱,全身倦怠感,易疲労感,体重減少,盗汗,リンパ節腫脹,皮疹,貧血,間質性の肺病変,腎機能障害など多彩な症状を呈する。

    【検査所見】

    血液検査で炎症反応(CRP)が陽性となり,小球性貧血,血清LDH低値,高アルカリホスファターゼ血症,多クローン性高ガンマグロブリン血症,高IgE血症などを示す。

    【診断】

    長径1cm以上のリンパ節腫大を認め,リンパ節または臓器がキャッスルマン病に合致する組織像を呈し,悪性腫瘍,感染症,自己免疫性疾患,キャッスルマン病に類似した症候を示す疾患を鑑別できる場合に診断する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    UCDは,外科的切除により完全に除去できれば治癒が期待できる。切除不能のUCDに対しては,局所放射線療法が有効である。組織型が形質細胞腫で,切除が困難で全身症状を認める場合は,特発性MCDに準じて抗IL-6受容体抗体であるトシリズマブの投与を考慮する。

    無症状または軽症の特発性MCDは,経過観察が可能である。発熱,貧血,咳嗽などの症状を認めるときは,初期治療として副腎皮質ステロイドの投与(プレドニゾロン換算で0.3mg/kg程度)を開始する。中等症~重症例には,トシリズマブの投与(8mg/kgを2週ごとに点滴静注)を行う。トシリズマブは一度投与を開始すると,生涯にわたって継続することになる。病勢の進行が速い中等症~重症患者に対しては,トシリズマブに副腎皮質ステロイドを併用する。トシリズマブはCRPの上昇を抑制するため,投与中は患者が感染症に罹患した場合でもCRPは増加しないことがあるので注意が必要である。

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